卵さんありがとう 続編

物皆値上がりするなかで不思議なことに卵の値段だけは安い、それどころかいつもの年であれば年末の需要で卵の値段が高くなるのだが、今年は様子が違う、理由は生産が過剰であり、その分価格が安くなっている。
生産過剰になる理由は、その前の段階で高卵価が続き卵生産者が利益をあげ更に増産し、需要以上の卵生産をしたからで、理由ははっきりしている。

高卵価、低卵価を繰り返すことが消費者の皆さんにとっても生産者にとっても利益にならないことは分かっている、もっと安定した価格で生産販売出来ないものか、勿論望むところである、しかしそれが出来ないでいる。
卵業界はただ手をこまねいていた訳ではない、いろいろと生産調整など試行錯誤もしてきた、しかしそれも機能せず、業界の選択した道は生産の自由競争と価格を市場原理に委ねることであった、そのほうが安全性、品質、価格で長い眼でみればトータルで消費者の利益につながり生産者のためにもなると考えた。

今年もうひとつ異変が起きた、いつもなら卵の生産県である九州、及び関西では通常消費県である関東に比べて卵の相場価格が安い、ところが今年はこれが逆転してしまった、こんなことは私が卵の仕事をしてから40年以上経つが始めての経験である。
理由はいたって明瞭である、2年前茨城県の養鶏は鳥インフルエンザによって壊滅的な被害を受けた、更なる感染の拡大を防ぐために茨城県の鶏は強制的に殺処分された、全国一二を争う鶏卵生産県である茨城県の生産減少によって高卵価となり、被害を受けた当事者を除き業界は潤った。
余裕の出来た生産者は増羽に走った、そこへ被害を受けた茨城県の生産者が懸命の努力で元に羽数を回復したことが重なり関東地方は生産過剰となり卵価は暴落した。

飼料などの原料高、製品安で卵業界は現在大変な赤字である、業界の負担で消費者の皆さんにサービスしていることになるのだが、こんなことは長く続かない、続けば生産者が皆いなくなってしまうからだ、好況不況を繰り返すごとに卵業界はふるいにかけられ経営の大小を問わず、優れたしぶとい生産者のみ生き残ることが出来た、卵の相場の神さまは時に厳しく時に優しいが、誰にでも公平である。