たまご屋おやじの独り言 2002年11月

たまご屋おやじの独り言 2002年11月

8/November/02

<日本たまご事情>息子の結婚披露宴

私事で恐縮ですが、先日長男の結婚披露宴が自宅の隣の元鶏舎でありました。なにしろ前にはニワトリが住んでいたコンクリート打ちっぱなしのあばら家です。まわりは畜産用のカーテンで囲っただけの場所です。こんな所で披露宴を?と親父オフクロは心配でなりません。

披露宴のプログラムはすべて仲間の若者達によって組まれ、親父の口出しする余地はありません。哀れな親父は式の当日、場違いな紋付袴を着て会場をただ心配げにウロウロとウロつくだけでした。身内親戚だけの結婚式と会食会を既に別の日にすませ、その日は地元の若者たち中心となりました。

案ずるより産むがやすし、息子の多くの仲間達が手伝ってくれて、それは賑やかで騒々しくも楽しいものとなりました。

正直親父の心境というものは複雑なものでして、息子に物事を相談されればされたで「そんな事もわからんで」と頼りなく思い、相談されなければされないで「俺を無視してやがる」と思い、まことに始末の悪いものです。それでいて事の成り行きを心配するというまことに間尺にあわない役割です。

3人の息子をもった私の親父も同じ思いをしていたのかと、今ごろになって死んだ親父をしきりに思い出した晩でした。
なにはともあれ「3代目たまご屋」夫婦の誕生です。

8/November/02

動物福祉とアメリカの鶏卵産業

昨日(11/6)J.R.Cセミナーにてスパボウ農場(USA)のDr.BehrendとFriedow氏の話を聞いた。彼等との付き合いはもう20年を超えている。いまだにダイナミックな変動を繰り返しているアメリカの養鶏産業の現場からの報告には迫力があった。そのなかでも動物福祉問題に対する業界の対応に興味を持った。

スパボウ農場の凄いところは、この動物福祉問題をビジネスチャンスとしてとらえ積極的に投資を開始したことである。ハンバーガーチェーン大手のM社が過激な動物福祉団体PETAの攻撃にさらされ、その使用している鶏卵を動物福祉対応のものにせざるを得なくなった。

鶏卵マーケットの状況が日々刻々変わっていく事はアメリカであろうが日本であろうが関係ない。鶏卵の大手バイヤーであるM社のニーズが変われば生産もそれに対応せざるを得ない。M社はその膨大な鶏卵購入を2社にしぼり、そのうちの1社にスパボウ農場はなった。
それは膨大な投資を伴うものであるし、あるいはリスキイな物かもしれない、しかし彼等は果敢にチャレンジしているのである。

アメリカのように、ある日突然日本にもこういう事態が起こらないともとも限らない。日本の生産者が現状の枠組みを守ることに汲々として変化に対応できなければ、スパボウ農場ならずとも日本にそれを供給する農場はアメリカにいくらでもあると心得るべきだ。

8/November/02

日本家禽学会 産学交流促進

10月25日−26日、宇都宮大学で日本家禽学会秋季大会が開催された。その時、一般にも公開されたシンポジウムは取り上げたテーマが良く盛会であった。

いままで学会に参加した時に感じていた違和感は、生産あるいは販売の現場と学会の先生方との感覚のどうしようもないズレであった。今まで不幸なことに先生方は産業界の現場のことには関心がなく、現場は先生方を当てにしない関係が永く続いてしまった。

現在、残念ながら農学また畜産学を勉強しても良い職場に恵まれない為、学生達に人気がない。それを指導される先生方の意気もまことに上がらないのが現状、どこの大学も農学部が消えてなんとやら意味不明の学部になろうとしている。

今、大きな大学変革の波が押し寄せているようだ。下手をすると先生方は自分の職場すら失いかねない。そして、産業界では日本国内での畜産物生産の是非が問われている。存亡の危機に立たされているのだ。

戦後、日本を動かしてきたシステムがあらゆるところで機能不全に陥っている。大学も産業界もその例外ではありえない。大学の先生方及び産業界に危機感が生まれ、そこではじめて本当の改革が始まる。

幸い、この日本家禽学会に並行して「家禽学、家禽産業関連の若手技術者、 研究者懇談会」が秋葉日本家禽学会長の呼びかけで開催され、熱のこもった議論は3時間を越えた。改革は始まろうとしている。

8/November/02

「鶏卵の計画生産に関するアンケート」

先日(10/21)、埼玉県鶏卵需給調整会議が開かれ、今年の6月から7月にかけて全国的に行われた「鶏卵の計画生産に関するアンケート」の結果が紹介された。これは全国一万羽以上の経営体2270戸にアンケートを出し、1539戸(68%)の回答をえたものである。この種のアンケートでは高い解答率であり、その詳しい分析はとても判りやすい。

この分析をもとに「今後の鶏卵計画生産のあり方」について具体的な選択肢として三つあげている。
1:従来の計画生産を改善する案
2:適正規模の生産を促進する案
(大規模生産者の生産拡大は自由だが保護政策無し、小規模生産者は保護政策あり。)
3:生産者の自主的な生産管理に委ねる案
(生産者は自由に生産が出来る)

これらの選択肢をもとに大いに議論してくれとのことらしい。

昨日の埼玉県の会議でも色々と議論があった。結局落ち着いたところは二番目の折衷案であった。
私自身の本心は三番案であるが、県全体として取りまとめるために二番案に妥協した。
さて、皆さんのご意見は?

8/November/02

メールマガジンの楽しみ方」岩波アクティブ新書に愛鶏園紹介される

私の畏敬する先輩に原田勉氏がおられる。ながらく農業ジャーナリスト畑におられたので、あるいはご存知の方がおられるかもしれません。氏は第一線を退かれてから後、74歳になられた時「電子耕」なるメールマガジンを始められた。最高年齢者によるそれの発行者としてマスコミにも随分と取り上げられた。縁あって私はこのマガジンに<日本たまご事情>なる駄文を月2回投稿していた。

今年10月、77歳になられた氏はなんと今度は「メールマガジンの楽しみ方」を岩波アクティブ新書より発刊してしまった。原田先輩の凄いところは、氏は現在骨髄ガンと闘っておられることを公表してしておられ、同時に私と同じ脳卒中でも倒れられたことがある。その中での出版である。同じ脳卒中仲間ということで可愛がってもらい、<日本たまご事情>を新書のなかでも紹介してくださった。

人にはいろいろな歳のとり方がありますが、見事な生き様とお見受けいたしました。一読を薦めます。
なお、「電子耕」のバックナンバーは、
http://www.nazuna.com/tom/denshico.html
にあります。