たまご屋おやじの独り言 2004年5月

たまご屋おやじの独り言 2004年5月

21/May/04

鶏糞の山

鳥インフルエンザ問題が小休止している間にちょっと朗報。
正直言って40数年間養鶏場をやってきて、いつも鶏糞のことは頭を離れなかった。 それほど難問であったのだ。 今年の秋、いよいよ法律によってそれの野積みは禁止されると言う。まさに尻に火がついた状態だ。 規模の大小を問わず、この対処を間違えるとこの養鶏業を続けることができない。

養鶏をやってきた者なら誰でも気がつくことだが、仕事が順調にいっている時には、 鶏糞の状態まで良くなってしまう。 ところが調子が狂い出すと結果的に鶏糞の状態まで悪くなってしまう。 他の仕事に追われて、鶏糞処理に手が回らないと腐敗が始まり、乾いていた鶏糞まで ベトベトになってしまう。 悪臭は出るは、ハエは出るは、挙句の果てにご近所の苦情まで出てしまう。

こんなことを40年近く繰り返してきた。つまり悪戦苦闘の連続でこれはこの仕事には つきものと半ば諦めかけていた。 ところが若い連中があっさりとこの問題を解決してしまったのだ。

それも同じ設備で特段お金をかけていない、ただ屋根つきの鶏糞置き場と作業用の 重機があるだけだ。 鶏糞処理の機械にお金をかけたらきりがない。しかも耐用年数が短い。せっかく良い 製品が出来ても良い値で売れない。

まさにコロンブスの卵で、そのやり方を変えただけなのだ。魔法のようなことを言う が出来上がった鶏糞堆肥がまるで違う。極端に言うとほとんど臭いがしない!?秘密は出来るだけ新鮮糞のうちに必ず戻し堆肥をたっぷり混ぜ寝かせることだ。 その後はなるべく高温醗酵を繰り返すほど臭いが消える。

大事なことだが、若い連中はこの仕事を愚直に繰り返し手を抜かなかった。そしたら いつの間にか鶏糞堆肥の状態が変わっていたのだと言う。 以来、鶏糞堆肥のことでは若い連中に頭が上がらない。

21/May/04

ぶらりぶらり通信 トレッキングシューズ

野山の緑が濃くなるにつれ野鳥たちはその姿が見えにくくなってくる。 鳴き声がするので目を凝らして見るがなかなかその姿は見えない。先日今年初めてのホトトギスの声を聞いたので嬉しくなり姿を追ったがやはり見つからなかった。

野山を歩くことは楽しい。だいぶ前になるが一時は夢中になって野鳥を追いかけていた。 その時はあたりの風景が目に入らなかった。 今でもその時の記録があるが、観察した鳥の名前、場所、月日などが書いてある。ただやたらに見た鳥の数を競うなんてことに興味を持っていたが、これはたちまち飽きてし まった。

歳を重ねるにしたがって、同じところを歩いていても景色が違って見えるのは不思議 だ。 今まで見落としていたものが見えるようになったのか、興味の対象が変わってしまったのか分らぬが、野山歩きは飽きない。

先日、久しぶりに東京秋葉原の登山用品専門店によってみた。靴売り場にはいままで 見たことも無いような新製品がずらりと並んでいた。おそるおそる長髪の若い店員に聞いてみると、最近の登山靴はその新素材の採用ですっかり軽くて丈夫になったという。 試しに履いてみたトレッキングシューズは嘘のように軽くて足にフィットする。

この靴をはいて、昔出会った鳥たちに会いに行こう。 今度はあたりの風景もきっと目に入るであろう。

15/May/04

ぶらりぶらり通信 聾瞽指帰と風信帖

先日、本当に久しぶりで上野の国立博物館を訪ねた。 お目当ては空海直筆の「聾瞽指帰(ろうこしいき)」と「風信帖(ふうしんじょ う)」だ。

博物館には新しい平成館があり、そこで「空海高野山」が展示されていた。 平成館があるのも知らなかったくらいだから、ひょっとするとここへ来たのは小学校の遠足いらいかも知れぬ。

空海が二十歳代に書いた「聾瞽指帰」は高野山にあって、なかなか見ることが出来ない。 最澄との手紙のやりとりである「風信帖」は本館の二階でいつでも見られるようだ。 この二つが平成館と本館と分かれてはいるが顔を合わせた。

千二百年の時空を超えてそれはそこにあった。 しばらくはぼんやりとそれを眺めていた。 読みたくても中身は読み取れないが、それがそこにあればそれだけで良かった。

金曜日だったので博物館は夜8時まで開いていた。帰り路上野の雑踏のなかで、 はたしてこの昭和、平成の世の中で「千年後に残れるものは何だろう?」と考えた。

15/May/04

鳥インフルエンザ LPAI(低病原性鳥インフルエンザ

今年日本に感染のあった鳥インフルエンザH5N1はいずれもHPAI(高病原性鳥インフル エンザ)であった。 タイ、ベトナム、中国、韓国いずれもH5N1のHPAIであり、同じH5N1であってもタイ、 ベトナムでは人に感染し人を殺したが、日本ではほんとうに幸いにもそれがなかった。 中国のことはよく分らないが、人に事故はなかったと言ってるし、韓国ではなかった。

農場にHPAIの感染があれば、山口県京都府の例を見るまでもなく、短時間のうちに 鶏が大量死するので否応なしにそれはわかる。 今度の京都府の例をみて、全国の養鶏家は間違いなく然るべき所へ通報するであろう。そうすれば直ちに感染防止の対策がとれる。

イタリア、アメリカでの経験では、最初にLPAIの発生があり、これは感染しても産卵率 にもほとんど影響なく、斃死鶏もあまり出ないので、農場では見過ごされやすい。 そのため感染防御の手段が遅れ、いつの間にか感染は拡大してしまう、そして突然 LPAIはHPAIに変身して鶏を殺し始める。 この場合は通報をいくら早くしても、鶏が 死に始めた時には既に感染農場が拡がっているので手の打ちようがない。

むしろこの病原性の弱いLPAIこそ日本の場合、警戒しなければならない。こっちの ほうが手遅れになりやすい。 通報の遅れた農場にいくらぺナルティを強くしても、それは機能しない。そのための全国的なAIモニタリング体制を早急に必要とする理由である。今ならば 全国の養鶏家の賛同を得られる。

国は殺処分と埋設によってAIは清浄化できると考えているようだが、養鶏家はそんな ことを信じていない。 世界的な大流行があった後は、どこでもそれを制御するのに、3−4年を必要としている。 それには国のやっている現行の清浄化対策に並行して、AIワクチンの使用許可、 全国的なAIモニタリング体制の確立がとにかく急がれる。

9/May/04

ぶらりぶらり通信 ラジオ深夜便

私は朝型、カミさんは夜型とまことにタイミングが合わない。 晩飯をすませ、TVなどをちょっと見ているともう私のほうはうつらうつらしてしまう。 どうやらカミさんのほうはその頃頭が冴えてくるらしい。そういうわけで夕食後の夫婦喧嘩は私のほうが分が悪い。 10時前には私は寝てしまうから、ご多分にもれず朝早く眼が覚めてしまう。そこでごろごろしながらラジオを聴くことになる。

NHKの午前4時から始まる「ラジオ深夜便 心の時代」は面白い。その道その道それぞれが辿ったオンリーワンの人生を語るわけだがまことに人はさまざまだ。聞いてて面白くなければ又うつらうつらしてしまう。ラジオの深夜あるいは早朝放送は、私のような中高年の客層で成り立っているらしい。

先日、NHKラジオ深夜便」ディレクター角井さんから電話があり、鳥インフルエンザについて鹿児島大学の岡本嘉六先生と対談して欲しい、それも生放送一時間だと言う。 断るつもりで、日頃NHK TVの鳥インフルエンザについての放送には不満やるかたなかったので、それをぶちまけても良いかと念を押し、また岡本先生とは鳥インフルエンザワクチンについて意見が違うから喧嘩になってしまうかも知れぬと脅した。

角井さんの方がうわてで「大いにやってください」という。 というわけで来週の日曜日(5/16)午後11時NHK第一ラジオ深夜便 サンデートーク」に出るはめになった。この時間帯は私や鶏たちには真夜中で頭は働かず、本番でどうなるのか見当もつかない。