たまご屋おやじの独り言 2004年10月

たまご屋おやじの独り言 2004年10月

31/October/04

ぶらりぶらり通信 半世紀めの同窓会

 私は中学、高校を横浜で過ごした、そこは一貫校であったので同級生の付き合いは6年間に及んだ。先日、半世紀めの同窓会が横浜中華街の萬珍楼本店であり、久しぶりに顔を出した。1955年卒業した時は237名、50年目に顔を揃えたのが75名、当時の先生方が8名も出席して下さった。

 すでに現役を離れ、それぞれ第二第三の生活を送っている者が多い、なかには商店、医者、弁護士、、、など自営業の人たちはまだ現役で頑張っている者たちもいた。それぞれが50年の人生を顔に刻み込んで良い顔をしていた、歳をとるにつれて同窓会の集まりは良くなっていると言う。

 忙しく過ごしてきた現役時代には参加したくてもその時間が無かったのであろう、ところが現役を離れ時間が出来、あたりを見回してみると、自分があくせくして来た事に虚しさを感じてしまい、それを埋めるために人はむしょうに古い友達に会いたくなるという、ある年齢になると同窓会が繁盛する理由とか、、、。

 ご多分にもれず、わが同窓会もこのところ2年ごとに開かれている、たしかに急がないと毎年仲間が亡くなってしまう現実がある。同窓会を欠席する葉書の連絡欄を見てみると、病気で来たくても来られぬ人たちが実に多い、そう言えば私も病気で2年前のこの会には欠席してしまった。

 驚いたことに参加された恩師の方々の実に若々しいこと、50年もたつと先生だか生徒だか区別がつかないほどだ、たしか私たちより10歳は年上である筈なのに。
 「先生、その若さの秘密はなんですか?」
 「そりゃー、同窓会に呼ばれ、それに出ることだよ」
こりゃー、一本参った、さすがに先生である。


31/October/04

鳥インフルエンザ Dr.Capua の話

 10月27日、皇居隣のパレスホテルにて日本鶏卵生産者協会(JEPA)の主催でイタリアの Dr.Capua女史の話があった。彼女は最近、赤ちゃんをもうけたほど若く妙齢の美人である、そういうわけか会場は300名を超え満席であった。

 ご存知のごとく Dr.Capua は過去数年間でイタリアの家禽産業を壊滅に追い込んだ鳥インフルエンザ(HPAI)を官の立場で経験し、最終的にそれをDIVAワクチンで立て直した功労者である。この事によって国際的に評価され、EUおよびOIE(国際獣疫事務局)の専門委員を務めている。

 Dr.Capua の語る、イタリアの経験したHPAIによる家禽類1400万羽犠牲の具体的な事例には戦慄させられた。イタリア政府はこれに直接補償費を1.59億ユーロ(約220億円)支出した、実際にかかった間接的費用はその2倍以上になり、この様な犠牲を払って得た結論として、
「HPAIを制御するには」
 1.農場を含めた徹底した防疫体制
 2.家禽類密集地帯では最新技術によるワクチン<例、DIVAワクチン>の使用(ただしワクチン使用の場合厳重な国家管理)
、の2点であった。

 当初 Dr.Capua は日本の農水省のごとくワクチンの使用には反対していたという、当時優れたワクチンがなかったのも事実であるが、DIVAワクチンの開発以降、現在では家禽類密集地帯ではそれなくしてHPAIの制御は不可能としている。現在日本の農水省で問題になっているHPAIワクチンの問題点の議論はとっくに終え、EU,OIEの推奨ワクチンとなっている。

 知らない訳ではないだろうが、日本の農水省もこの海外の事実を謙虚に受け止め、対処する必要がある。繰り返して言うが、日本だけが殺処分方式でそれを制御できるとはとても考えられない。


24/October/04

「高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に関する意見交換会

 10月15日、「高病原性鳥インフルエンザに関する意見交換会」が農林水産省の主催で東京三田共用会議所で開催された。消費者、養鶏関係者を含め200名以上の出席者があった、会場は入場時チェックを受けるほど大袈裟で立派な場所であった。農林水産省の主催だけに関係する主要な役職の人たち、学識経験者等がひな段に勢ぞろいした。会議の半分は農林水産省のすすめるHPAI対策の説明があり、後半はそれをもとに会場の参加者との意見交換があった。

 日本養鶏協会の梅原会長ほか鶏卵生産者はHPAI対策にはワクチン使用が不可欠と強く主張した、これに対し東大医科学研究所の河岡義裕氏はワクチン使用によるHPAI株の変異で人間への危険性を述べ、農林水産省のすすめるHPAI対策を支持した。消費者代表といわれる方々が多く出席されていたが、関心のあるのはHPAIの人間への危険性であって、残念ながら養鶏場へのそれではない。

 この手の官主催の会議では、政策遂行に都合のよい専門家を集め、生産者の反対意見にはそれを発表する場を与えガス抜きをし、後で専門家に反論させ、消費者を味方につけるという真に巧妙な手が使われる。その日はまさにそれを絵に書いたような意見交換会であった、これで農林水産省は消費者からも生産者からも意見を聞いたことにするのだろう。

 一つ救われたのは専門家として出席されていたOIE(国際獣疫事務局)の小澤義博氏が、世界の状況を見る時日本も積極的にHPAIワクチンの使用を検討すべきだと主張されたことである。つまり現在農林水産省の進める「HPAI防疫指針」でそれが制御出来なくなった場合を現実に想定して、ワクチン備蓄を増やしその使用法の検討を即刻すべきだと私は理解した。小澤氏の意見が農林水産省の意に合ったものであるか否かは私は知らない。

17/October/04

ぶらりぶらり通信 麻布十番のオムレツライス

 業界の会議が午後二時から東京の三田共同会議所であった。
かねてから行きたいと思っていた麻布十番の洋食屋「グリル満天星麻布本店」はその近くにあるらしい。この日は天気が良かったのでJR田町駅から歩き出し三田高校の前を通り、会議所の場所を確認してからその洋食屋を探すことにした。地下鉄麻布十番駅の近くと聞いていたので簡単に探せると思ったのは間違い、たどり着くまでかなり歩きまわった。

 料理が美味しいのは、半分以上は食べる側の受け入れ態勢にあると考える。十分歩き回りお腹もすいていたのでコンデションは上々であった。その洋食屋はビルの地階にあった、入り口のまえに中の見える大きな冷蔵庫があったので何気なしに覗いてみると、そこには客用のワインと、料理に使う食材が詰まっていた。オムレツに使うタマゴが30ヶ入りの紙トレーに詰められ積まれているのが見えた、いわゆるピンク卵である(赤玉と白玉の中間色)、もっと詳しく言えばこれには国産鶏によるものと外国鶏のものがあるが、外見からは分からなかった。

 よく食材にこだわるお店でタマゴは放し飼いの有精卵にかぎるとか、なにかと能書きを言いたがる、こういう店にかぎって味はあまり変わらないのにお勘定はしっかり取る。私は今まで色々なタマゴを食べてきて、飼育方法でその味が変わると言う経験をしたことが無い、使用する餌では確かに味は変わることが分かる。

 この店は特段そのことを宣伝している訳ではないが、やはり材料にはこだわっているのであろう。昼食に1800円のオムレツライスセットは安くないが、見事な一品である。

10/October/04

世界たまご屋会議 IEC(International Egg Commission)?

 世界たまご屋会議は堅苦しい会議ばかりをやっている訳ではない。否むしろ、IECの目的は世界中の鶏卵関係業者の交流が主目的だ、それはあらゆる機会に行われる。こういう事になると、ヨーロッパ,アメリカの人たちは実にうまい。

 同じ晩飯を食べるにしても、Sydney湾の船の上であったり、夜の動物園がその会場であったり、農場の巨大な倉庫のなかのバーベキューのときもあり、歌あり踊りありの大騒ぎとなる。一晩だけ男は黒の正装、蝶ネクタイ、夫人達はは思いっきりめかした正式の晩餐会もある、この場合でもセレモニイの長ったらしい挨拶など殆どない、例えあったとしてもお偉いさんほど短く、二三言冗談を言って皆を笑わせる程度だ。この晩餐会で、鶏卵の消費宣伝に最も貢献のあった国が表彰される、ことしは主催国のオーストラリアが選ばれた。

 私はオーストラリアを訪ねたのは始めてである、日本から遠いことは遠いが、ヨーロッパ,アメリカの人たちに比べれば断然近い、彼等は飛行機を乗り継いで20時間以上かけてやってくる、日本からは8時間前後でそれに時差も殆ど無いので助かる。今回始めてオーストラリアにとって日本が重要なお隣さんであることが分かった、経済的にも距離の上でも……。

 なにしろこの国の農業用耕地と牧草地を合わせると、日本のそれの約90倍ある、そこに住んでいる人たちは日本の六分の一に過ぎない。オーストラリアは農産物、資源を輸出せざるを得ないし、日本は工業製品を売って農産物、資源を買わざるを得ない。この良い関係が両国をフレンドリーにしているのであろう。
(世界たまご屋会議IEC 終わり)

9/October/04

世界たまご屋会議 IEC(International Egg Commission)?

 各国代表が自国の鶏卵事情を説明する当日、私は会場に着いてもまだ準備が済んでいなかった。ABC順に各国が説明を始めた、まだ私は英作文に四苦八苦していた、たちまち順番がきてJapanの名前が呼び上げられた。私は準備不足のまま演題に立った。

 こうなれば仕方がない、大事なことだけを簡潔に大きな声でゆっくり喋ろう、そうすれば時間も稼げるし、、、。火事場の馬鹿力ではないが人間ピンチになると意外なチカラが出るらしい。苦労して作った原稿に眼を落としながら、とにもかくにも言いたいことを、とつとつとつっかえながら時間内に英語で言い終えた。

 たまげた事に「日本人はタマゴを世界一多く食べる、だから日本人は世界一の長寿国だ、長生きしたければタマゴをもっと食べよう」のくだりを話した時、自分で言うのも可笑しいが会場大拍手と大爆笑となった、予想していなかったことだけに喋った当人が慌ててしまった。

 上機嫌になって、あとでこの事を別行動していたカミさんに話すと、「あなたの英語があまりにも下手くそだったから、それが同情を集めたのよ」とつれない、それもそうだがずばり急所を突かれると気分が悪い。

7/October/04

世界たまご屋会議 IEC(International Egg Commission)?

 現在の日本の鶏卵事情を10分以内で英語で説明しなけれならない、それも150名くらいの前で、、、まさにトホホである。この仕事を40年もやってきているから日本の鶏卵事情はなんとかなる、問題は英語の表現力だ。英会話は相手とのやり取りがあるから何とか続く、判らなければ聞き返せば良い、しかし一方的に自分の英語でまとまった意見を述べた経験はほとんどない。私の英語の表現力は自称『中学生に毛の生えた程度』のといったら中学生が怒るだろう、その程度のものだ。

 悔やんでいても仕方ないので、発言趣旨を出来るだけ短い英文で箇条書きにしていった。
*幸運にも日本人はタマゴが好きである
*日本人のタマゴ摂取量は世界一で、一人当たり年間333ヶである
*その95%を自給し5%を輸入している
*日本には刺身文化がある、魚もタマゴも新鮮な生で食べる習慣がある
*そしてそれが一番美味しいと信じている
*日本人はタマゴの鮮度について世界一うるさい国民である
*そのため日本の鶏卵関係者は鮮度の向上に努力した
*日本人はタマゴを世界一食べて男も女も世界一の長寿国である
*タマゴのコレステロールが健康に悪いのではなく要は食事のバランスである
*この問題は日本の例を見ればわかる
*不幸にして今年の一月、日本の西部で4農場に鳥インフルエンザ(AI)の発生が79年ぶりにあった
*幸い日本の強力な防疫機能が働き約25万羽の処分で制御することができた
*この際、風評被害が鶏肉,タマゴともに多かった
*特にTV,新聞による連日の報道が影響した
*AIの感染源は渡り鳥と言われているため今年も冬が心配である、、、、、、

 言いたいことはいくらでもある、要はこれ等を簡潔、明瞭に英語で相手に伝えられるかである。慣れない英語脳を使ったためと、旅の疲れも出てその晩は完成しないまま寝込んでしまった。

5/October/04

世界たまご屋会議 IEC(International Egg Commission)?

 会議のメインテーマはいつも一貫している、「どのようにしたら鶏卵の消費を増やせるか?」である。国々によって鶏卵事情は異なるが、ここに参加してしている者たちにとってそれは共通のテーマなのだ。サブテーマはその年によって異なるが、それは「動物愛護問題」であったり、「鶏卵のサルモネラ問題」であったりする。日本の鶏卵業界は今「鳥インフルエンザ問題」で持ちきりであるが、残念ながらこの大会ではあまり話題にならなかった。ある国にとっては死活問題のことが、他所の国ではまるで関心がないという、世界はまことに広いのである。

 大会の出席者リストを見てみると、どうやら日本からのそれは私ども夫婦だけであるらしい、鶏卵生産大国の一つとしては寂しいかぎりだ。いつも日本から3-4名の参加があり、日本を代表して桜井タクジ先生が孤軍奮闘、日本の鶏卵事情を世界中の関係者に説明されていた、今年は体調をくずされ参加されていないという。会う人ごとに「Dr.Sakurai はどうしているのか?」と聞かれる。

 大会の中日、一日かけて参加各国の鶏卵事情をそれぞれの代表が10分以内で英語で説明することになっている、今までは桜井先生がこの部分を担当されていたので安心して聞いていられた。これはまずい事になってきた、日本からの参加者が一人だとするとこの役が私に回ってくる!?
案の定、ノルウェーの担当役員がやってきてそのことを私に告げた、いつのまにか私は日本代表ということになってしまった。

 発表の前日にそれを告げられたとは言え、発表するにはそれなりの準備がいる。用意の良い国は、プレゼンテーションにPCを使い見事にそれをやってのける。なにも用意することなく、呑気に大会に参加したことを悔いたがもう間に合わない。

3/October/04

世界たまご屋会議 IEC(International Egg Commission)?

 9月後半、オーストラリア Sydneyのホテルに世界中から「たまご屋さん」関係者がカミさん連れで集まった、参加者は36ヶ国、300名を超えた。この会議はイギリス人が組織し、アメリカが強力に支援している、事務所はロンドンにある。IECは鶏卵関係で世界的にネットワークをもった組織としては唯一のものであろう。日本も国としてそのメンバーとなっていたが、予算の関係で会費を削られ、今ではメンバーとなっていない、残念なことである。

 この組織は自由度が高く、年会費と年一回開催される大会の費用を払えば個人として誰でも参加できる。私も過去三回ほどオーストリア、カナダ、南アフリカの大会に参加してきた、その後病気などして休んでいたが、有難いことに今年再開できた。会議は同じホテルを中心に五日間続けて行われるが、その間いろいろなプログラムが組まれている、カミさん向けのそれも特別用意されている。この大会の目玉は世界中の鶏卵関係者の交流である、言葉の問題はお互いにあるが、同じ仕事で苦労していることで妙な連帯感が生まれる。世界中の養鶏家同士ゴツイ手で握手する時、それは言葉の壁を越えるものがある。

 会議初日、会場へ入っていくと懐かしい顔が見える、「やあ、お前、生きておったのか!?」ご挨拶である。
このようにして会議は始まった。