たまご屋おやじの独り言 2004年9月

たまご屋おやじの独り言 2004年9月

15/September/04

高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)に関する特定家畜伝染病防疫指針(案)に対する意見書

1、 2004年1月、日本で発生した4件のHPAIは関係機関の努力によって防圧されたが、これはむしろ奇跡的に成功した事例と考えたほうが良い。
ここ数年世界的に大流行しているHPAIの事例をみてみると、イタリア、オランダ、メキシコ、北アメリカ、カナダ、中国、韓国、タイ、ヴェトナム、、、いずれも日本のように初発農場の段階でくい止められた事例は少なく桁違いの規模で大発生している。
むしろこのHPAIは家禽の密度の高いところに一度発生したら制御不能になる事例のほうが多い。

2,  この防疫指針(案)は日本の稀有な成功事例をもとにして作成されたもので、大規模発生の事態を制御する視点を欠いている。
我々養鶏生産者がもっとも心配するのはこの点で、大規模発生に対応出来る防疫指針とは言いがたい。
むしろこの防疫指針(案)で制御できるHPAIの規模であれば幸運であるとさえ考える。

3、 海外で大規模なHPAI発生を経験し、莫大な損害を受け、それをもとに対応策を考え出し、実行し成功した国々がある(イタリア、香港、メキシコ、アメリカ)。
これ等の国々ではいずれも、ワクチンを選択肢のひとつとして重要視している。
この防疫指針(案)ではその海外の事例を学習しているとは思えない、それどころか農水省は「ワクチン害悪論」を先行させ、そのデメリットのみを強調しているのは理解できない。

5、  防疫指針ではHPAIが続発した場合のみ、ワクチンの使用を検討するとしているが、生産現場での経験からすればそれはほとんど意味をなさない。
用意されているのは不活化ワクチンなので注射に要する時間、効き目を現すに必要な日数を考えれば、これは殆ど間に合わないと考えたほうが良い。
HPAIの初発と同時に即刻周辺農場にワクチン接種をすべきである、それでも間に合うかどうか懸念されるが、感染拡大を食い止めるには他に方法が無いことを経験国の事例は示している。

6、  日本は優れた鳥インフルエンザのワクチンを開発、製造できる十分な能力がある、官民力をあわせ世界に先がけ鳥インフルエンザワクチンの開発を急ぐ必要がある。それが日本のためになり、世界に貢献できる道と考える。
生産現場の経験からいえば、今まで困難な感染病も皆ワクチンで解決してきた、日本にそれが出来ないわけが無い。

15/September/04

ぶらりぶらり通信 恐山?

 まだ薄暗いこの恐山の地獄に住み着いているカラスはどうも気持ちが悪い。
全体にのろのろしていて、人が近寄っても逃げようとしない、こんなに近くでしげしげとカラスを見たことがない。カラスのほうでもこちらを良く見ていて、餌となる供え物を持っているかどうか、人間の態度で分かるらしい。やがてカラスたちは私に興味を失って、地獄のいたるとろにある、小石を積み上げた塚の石を咥えて遊びだした。

 賽の河原で小さくして逝った子供たちが父母を慕って小石を積み上げたものを、地獄の鬼が来て突き崩していくと話に聞いてははいたが、、、。
未だ明けきらぬ妖気の満ちたな風景のなかにしばらく立ち尽くしていた。
やがて宇曽利湖を取り囲む峯峯が明るくなった、湖畔の極楽浜の白砂がぼーっと浮かび上がった。ここでは地獄と極楽が地続きである。

 その昔、徒歩でしかこのお山にお参りできなかった時代、それは難行苦行の連続であったに違いない。今のように物見遊山の気分で来るわけにはいかなかった。
多くの人たちが背負いきれぬ苦しみと悲しみに押しつぶされそうになり、やむにやまれない気持ちに突き動かされて人々はここにたどり着いたのであろう。
その人たちのここに見たものは、本当の地獄であり、極楽であったに違いない。
少なくとも私の見た感傷的な景色とはわけが違う。

5/September/04

鳥インフルエンザ(AI) ワクチンについて 北日本養鶏研究大会

9月2日に青森市で行われた北日本養鶏研究大会は参加者350名をこす盛会であった。大会は予定の時間を大幅に超えたが誰も席を立つ人がいないほど熱をおびていた。農水省において実質的なAI対策をきめていると言われる、北海道大学の喜田 宏先生と農水省の境 政人氏がパネラーとして出席していたからだ。特に喜田先生がAIワクチンについてその考え方を、直接これほど多くの養鶏家の前で発表されるは始めての事と思われる。

 ともすれば生産者中心の大会では、論点を整理した筋の通った論議が行われにくいし、数を頼んで反対する勢力を押しつぶしにかかることが多かった。
しかしこの大会は違っていた、日本養鶏協会の島田 英幸専務が特にAIワクチンについて論点を整理し、日本鶏卵生産者協会が独自に調査したイタリアの事例を紹介し、従来農水省の主張しているいわゆる「ワクチン駄目論」を論破していった。
これに対し喜田先生はまともに答えようとはせず、ただ従来の「ワクチン駄目論」を繰り返すだけであり、しまいには「99%AIワクチンは駄目です」と言い切った。

 会場に参加していた養鶏家は唖然とし愕然とした、いまからでも遅くはない、AIの専門家として喜田先生は「なぜAIワクチンは駄目なのか、そんなに危険なのか」を養鶏家にわかる言葉で説明し納得させて欲しい、それが立場上の責務であろう。それさえなく、農水省の進めるAI根絶作戦では不幸にもAIのコントロール不能となり、AIの大爆発が起きてから先生に色々と弁解されても、また責任をとってもらっても何の足しにもならない。

久しぶりに興奮した研究会であった、この素晴らしい大会を企画された皆さんに感謝します。

5/September/04

ぶらりぶらり通信 恐山?

 一人旅は呑気なものである。

 青森市で行われた養鶏研究大会のついでに野辺地駅で車を借り、かねてから念願の下北半島を一周し、夕方霊場恐山にたどり着いた。宿坊に宿を乞うてから、時間があったので話に聞いていた地獄めぐりをし、賽の河原の宇曽利山湖畔に出て宿坊に戻った。昼間は参拝客も多く賑やかであったが既に山を降り、夕闇が迫っていたので境内に人気はなかった。

 霊場恐山の歴史については専門家にまかせるが、この妖気の漂う霊山はただ事ではない。観光シーズンを過ぎたのか、その日300名以上も宿泊できる新しい宿坊に泊ったのはわずか7名であった。新しい宿坊には快適な温泉設備があるのだが、私は境内にある掘っ立て小屋のとても熱い硫黄泉に浸かった、ここは隣の蒸気の噴出す地獄から源泉をひきそのままかけ流しにしたもので、顔を洗う水もなければシャワーもない、昔そのままの温泉の姿である。ゆっくり温まり、暗い境内をただ一人横切り宿坊に戻った。部屋は15畳もあろうか、そこの中央にぽつんと布団がひとつ敷かれてあった。

 その晩は疲れていたので9時前にそのままぐっすり寝てしまった、小用のため起きてみるとあたりはまだ薄暗く時計は4時をまわっていた。ふと夜明けの地獄まわりを思いついた、魑魅魍魎の跋扈する闇から夜明けの瞬間の地獄が見たくなった。
 急いで床を抜け出し足元を固めてから一人で現場に急いだ、薄暗い通り道に佇む赤い前掛けと白い手ぬぐいをしたお地蔵がやけに生々しい、地獄の使者かあるいは供物を狙う泥棒か、数拾羽のカラスがいっせいにこちらを見ている。不幸な水子に供えられた赤い風車が風もないのにカラカラとまわっていて、思わず背中がゾクゾクした。
落ち着いて考えれば噴出す硫黄臭の蒸気に反応しているだけのことなのだが、、、。