３月１２日夜、ゴールデンタイムにＮＨＫスペシャル「あなたの知らない卵の話」は放映された。ＮＨＫがどのような意図のもとに卵の話をしようとしているのか、全国の鶏卵関係者は固唾を飲んでこの番組を見ていたに違いない。私は正直これを見終えてほっとした。印象に残ったのは三つであった。
一つは日本の鶏卵業界が厳しい競争の結果、付加価値卵なるものを開発し、それがスーパーマーケットの鶏卵売り場の大きな部分を占めるにいたったこと。その生産現場などが詳しく紹介された。
二つ目は中国最大の鶏卵生産会社ハンウェイ社の社長が出ていて、日本をターゲットに紛卵工場を建設中であるといい、その建設現場が写された。
三つ目はアメリカの種鶏会社ハイライン社の紹介があり、ケーシー社長は現在世界中で採卵用の種鶏会社は数社を残すのみとなった現実を話していた。
取材は中国、アメリカ、日本と広範囲にわたり、時間と費用をかけたものであった。
見終えてほっとした理由は、全体的に日本の鶏卵業界に対して冷静に事実をありのままに報告していたことである。高価格の特殊卵を良いとも悪いとも云わず判断は視聴者にまかせ、鶏卵でも中国が強力な競争相手となってきている事実を知らせ、育種の世界では世界的な競争が行われていることを知らせていた。私ども鶏卵業界が恐れたのは、偏ったシナリオのもとに業界に対し悪意をもって報道されることだ。同じ事実を取材しても、シナリオ次第でどうにでもなることを私たちはいやっと云うほど経験している。
