おかげ横丁

元気のある商店街を歩くのが好きだ。日本全国どこへいっても昔繁盛したであろう商店街が、時代に取り残されて活気を失っているのを見るのは辛い。先日、生まれてはじめてお伊勢さんにお参りしたとき、そのただならぬ佇まいには恐れすら感じたが、今日はそのことでなくその門前町おかげ横丁を訪ねたときの驚きを話そう。

この門前町は、その昔お伊勢参りが一生に一度の大旅行であった時代から賑わっていたことであろう。お伊勢さんが安泰であるかぎり繁盛まちがいなしと考えられていたが、時代の変化は凄まじく、交通手段の変化、つまり自動車でここにお参りするようになって人々の流れは変わってしまい、何処にでもあるようなお土産横丁に人々は来なくなってしまったのだそうだ。これは全国の旧繁盛商店街についても言える。

だがここからが伊勢のおかげ横丁は違った。横丁全体をお土産やさんのテーマパークに仕上げてしまったのである。建物のイメージを大正・明治時代のそれに統一し、横丁から電信柱が消えた。歩いていると実に楽しい。自動車でやってくる人たちをも引き寄せている。全国どこの商店街をみても、シャッターの閉まった店、モダンなビルから明治の平屋の老舗まで無茶苦茶に混在している。意思の統一など出来るものではない。このおかげ横丁を再生するには余程強力なリーダーシップとそれをそれを支えた地元の力があったに違いない。

あとで聞いた話だが、あんころ餅で知られる「伊勢の赤福」がリスクを覚悟して全部民間の知恵で為し遂げたものであるという。さすがと云わざるをえない。帰りにたくさん赤福餅を買い込んだ。