たまご屋おやじの独り言 2003年8月

たまご屋おやじの独り言 2003年8月


31/August/03

ぶらりぶらり通信 「犬も歩けば棒に当たる」

「犬も歩けば棒に当たる」とはよく言ったもので、先日思いがけず面白い物にぶつかった。

私の住んでいる岡部町から高速道路に乗れば2時間で長野市に着いてしまう。冬のオリンピック以来ずいぶん便利になったものだ。お目当ては上林温泉、塵表閣の混浴野天風呂で、近くの松浦さんの家族に同乗させてもらい、お嬢さんの運転で出かけた。

少々時間が有るというので途中小布施町に寄った。カミさんたちは前にも来たことがあるそうだが私は初めてであった。小布施町北斎寺(岩松院)と落雁が旨いと聞いてはいたが、今では「人の集まる街作り」で有名である。
 
なるほど街には若い娘さんたちがいっぱい遊びに来ている。それにつられて若い男どももやってくる。善光寺参りのついでにやってくるジイサン、バアサンだけを当てにしなくてもよい。

この街には余程の知恵者がいるらしい。一つのしっかりしたプランとコンセプトのもとに毎年この街は確実に成長している。確かにこの前来たときより良くなっていると誰でも言う。

私はこの町の岩松院にある北斎の天井絵「八方睨み鳳凰図」を見て正直肝をつぶした。こんなに大きな迫力のある日本画は見たことが無い。画題は中国から貰っているとはいえ、北斎のオリジナルなデザインはまったく凄いものだ。

その夜、混浴野天風呂を楽しんだのは言うまでもない。ただし女性が特製浴衣を身に着けているのがちょっとだけ気に入らなかった。

31/August/03

寒さの夏はおろおろ歩き・・・

日照り(雨不足)の時は涙を流し、寒さの夏(冷夏)はおろおろ歩き・・・。

ご存知、宮沢賢治の歌である。37歳の若さで彼は世を去っているが、残したものはあまりにも多い。
今年、北海道、東北3県は大変な冷害と聞く。私のいる埼玉県熊谷地区は日本でも最高気温を記録するところだが、今年はやはり冷夏である。稲作の人達には申し訳ないが、鶏たちにとっては暑さによる熱死もなく過ごしやすい夏となった。
 
一方、EUからの便りによれば、今年は異常に暑く、養鶏産業にその影響は大きく、特にフランスの北西部では百万羽のブロイラーが熱死している。いまだかって経験した事のない暑さと言われるから、いつもは夏涼しいヨーロッパは暑さに対する備えは出来ていない。ブロイラーのみならず採卵鶏にも影響がでたと容易に想像できる。
 
このため鶏肉の値段が15−35%値上がりし、漁夫の利を得たのはタイ、アメリカでそこからの輸入が急増している。タイから日本へ輸入される鶏肉の値段も急騰した。異常気象は世界中の農畜産物の値段を撹乱する。
泣く人、笑う人、世はさまざまだ。いつなん時この立場は逆転しないともかぎらない。

17/August/03

GOOD NEWS アメリカの鶏卵消費量大幅UP
 
前回、台風と停電について心配事を書いたら、NYにて史上最大の大停電が起きた、クワバラ、クワバラ・・・まったく、なにが起きるかわからない。

GOOD NEWSをひとつ
近年アメリカで、鶏卵の一人当たり年間消費量が大幅に上昇している。6年以前それが235ヶであったものが、昨年(2002年)は254ヶと推定されている。

ヨーロッパなど先進国の鶏卵消費量は依然として横ばいか減少しているなかで、なぜアメリカのみが回復したのだろう?

「タマゴとコレステロールの呪縛」にアメリカはじめヨーロッパ諸国の鶏卵業界は徹底的に苦しめられた。1960年代初期、アメリカは鶏卵消費量年間一人当たり400ヶを超えていた、これが1990年代初期220ヶ代に落ち込んだ。大きな理由は「タマゴとコレステロール」問題であった。

以来アメリカの鶏卵業界はこれが科学的に間違いであることを訴え続けた。幸い最近ハーバート大学の11万人に及ぶ大規模な疫学調査の結果、健常者であればタマゴ一日一ヶ摂取はなんらコレステロールと関係ないとの結論となった。

また日本などタマゴを世界一たくさん食べる国が心臓病が少ないことがはっきりし、タマゴが悪者なのではなく、要は食事のバランスであり、カロりーのコントロールであることがアメリカ人にも判ってきたのがその理由である。

この間、アメリカの鶏卵業界が手をこまねいていた訳ではない。懸命になってPRに努めた。その努力の一端が下記HPに見られる。

24/August/03

ヒヨコは誰がつくるの?

採卵用のヒヨコをつくる種鶏孵卵業界がすっかり変わってしまった。その激動の歴史はそれだけでひとつの物語となる。

私は採卵養鶏家サイドにいて、専門農協による種鶏孵卵事業にかれこれ30年以上携わってきたが、これはとても難しい仕事だ。個人企業でそれこそオヤジがシャカリキになってやっても難しい仕事なのに、まして組合での経営となると尚更だ。
 
そういうわけで、30年まえ全国で実質的に活躍されていた孵卵場は500軒以上あったものが現在ではその一割もない。専門農協では私どもの神奈川養鶏連のみとなってしまった。幸い組合は人を得たことと、これを支えた採卵家の連携プレーで設立いらい50年持ちこたえることができた。

採卵養鶏家にとって困ることは、選択できる孵卵場の数が減ってしまうことと、同時に選択できる鶏種が少なくなってしまうことだ。ところが現実にはこの30年間確実にその方向に向かっているし、近い将来さらにそれは進むであろう。

そのなかで専門農協として孵卵場が生き残る道は一つしかない。それは「さらなる採卵家との連携プレー」につきるであろう。機能分担して、ヒヨコをつくる人、タマゴをつくる人が一体となってことに当たる。幸い食品の安全性が問われる今、本当に安全なタマゴをつくるには、ヒヨコにまでさかのぼる必要がある。
「自分たちのヒヨコは自分たちでつくる」組合設立の原点に立ち戻らざるを得ない。

24/August/03

ぶらりぶらり通信 「邂逅(かいこう)」

世の中には凄い人がいるものです。

自分が脳梗塞で倒れた経験があるものだから、新聞や本を見ていてもその手の記事には自然と眼がゆく。特にその病気に倒れ、障害を持ちながら残された機能を生かし、社会復帰している人たちの話には心を動かされる。

世界的に活躍されていた免疫学者の多田富雄先生は、2年前突如脳梗塞で倒れられ、それもかなり重症であった。言葉を失い、半身麻痺、食べ物を飲み込むことも出来ない状態に追い込まれ、学者としての生命は絶たれた。その時の心境を率直に書かれているが、とても悲しくて読みとおすことが出来なかった。
 
社会学者の鶴見和子先生も5年まえ脳出血で倒れた。現在でも車椅子の生活であるが、病後、頭が冴えて若いときにやっていた短歌が際限なしに湧き出てくると言い、病後短歌集「回生」を出版されたほどである。
 
脳卒中の後遺症は人によって千差万別である。幸いお二人は思考回路と記憶の部分が残った。 この二人が最近対談集「邂逅(かいこう)」(藤原書店)を出された。往復書簡をもって構成されているこの本はかなり専門的で決して読みやすくはないが、読む人を勇気づける。
 
学者としての生命を絶たれても、残された機能を最大限生かし、その人ならではの発言には深く感動する。言ってはなんだが、病院でもらってくる若い先生処方の脳卒中の薬より、この本のほうが効きそうである。

17/August/03

ぶらりぶらり通信 インターネット書店

本を読むのは楽しい。面白いもんで、読めば読むほど次に読みたくなる本が出てくる。さぼっていればそれが出てこない。

現役時代は仕事関連のそれらを無理やり読んだが今はそれも無い。有り難いことに気の向くまま好きなものを選べるから不思議だ。書店の棚をひやかして歩くのはなんともいえない快楽のひとつである。そこには自分の知らない世界が拡がっているからだ。

さらに最近、インターネット書店の面白さにやみつきになってしまった。ご存知、紀伊国屋書店BK1、アマゾン・・・などネット書店が繁盛している。 各社それぞれ独自の書籍データベースを競っているが、これが実に楽しい。著者、書名、出版社、ジャンル・・・等、如何様にも検索、一覧表示、並べ替え可能なのだ、まるで図書館の検索室が自宅に引っ越してきたみたいだ。

ちょっと前ならまるで夢のようなことが自宅のPCで出来る。若い世代にとっては当たり前のことだろうが私等の世代にはまるで魔法に近い。

という訳で、興奮のあまり読みもしない本を買い込み、家中はごみ箱と化してしまった・・・カミさんの機嫌が悪い。

10/August/03

台風一過

台風10号が全国に被害を残して通り過ぎ、そして暑さが戻ってきた。台風で恐ろしいことは色々とあるが、最近の養鶏家にとっては停電が最も恐ろしい。特にこの頃の鶏舎はウィンドウレスで自動化が進んでいる。気温の高いこの時期は一刻も電気無しではいられない。確かに緊急時の発電機は用意してあるが、たいてい最小限のものしか用意されていない。ましてや2−3日以上にわたる停電など未経験なので、無事切り抜けられるか心配の種はつきない。

今年の夏、原子力発電のトラブル隠しで発電がストップし、日本に大停電が心配された。このようなピンチの時、さすが日本人は各人それぞれの立場で良識を発揮して事なきを得た。大停電が起きればその被害ははかり知れない。現にアメリカ、カ州でのそれが現実に起き大問題となった。

悪い悪いと言われた日本の経済もどうやら底を打ったらしい。マスコミは日本の現状を必要以上に悪く言いたがる。良い状況があっても取り上げない。まるで良くなっては困るみたいだ。
 
日本の鶏卵業界も戦後最低の卵価と騒いでいるが、世界の鶏卵業界の状況に比べればこんな恵まれた国はない。世界最大の一人当たり鶏卵消費国にいながら贅沢は言えない。
日本の鶏卵業界は「経済の問題は経済で解決する」、下手政治が絡むとややこしくなる。

10/August/03

ぶらりぶらり通信 「戦場のピアニスト

大分遅まきながら深谷の映画館で「戦場のピアニスト」を観た。

いつもは十人前後の観客も、この晩は大入りで三十人前後入っていた。と言っても満杯で50人なのであるが。上演に先立ち館主が挨拶するのものこの映画館らしい。今日は昼の部二回とも満員であったとのこと、さすがに嬉しそうであった、たとえ観客が2−3人であっても、ここでは真面目に上映してくれる。なんとか長続きして欲しいものだ。
 
みっともない話だが、病気をしてから感動することがあると、ところ構わずまず身体が反応して嗚咽してしまう。とにかくこの映画には泣かされた、周りの人が怪訝そうにこちらを見ていてもお構いなしである。

物語は第二次大戦、ナチの占領下ワルシャワで生き抜いたユダヤ人ピアニスト、シュピルマンの実話である。何故か破壊しつくされたワルシャワの街を泣きながら一人行く主人公に、横浜大空襲の晩を想い重ねていた。

親父が「これが横浜の見納めだ」とばかり、防空壕に隠れていた小さかった家族全員を外に出し、空襲によって赤々と燃える横浜の夜空を見せた。

同時代、シュピルマンはゲットーを逃げ出し、奇跡的に生き延びていたことになる。映画が終わっても立ちあがる人はいなかった。エンディングに使われたショパンピアノ曲があまりにも凄かったから・・・。

6/August/03

<日本たまご事情>どうして卵はこんなに安いの?

今年の卵価は戦後最安値が予測される。理由は需要をこえた生産過剰である。
採卵業界は戦後何度となく低卵価と高卵価を繰り返してきた。これではならじと業界を安定させるべく種々な対策がたてられた。行政指導による生産調整はその最たるものであろう。これも長年試行錯誤したが十分機能したとは言え無い。
 
以前なら、今年のような低卵価に見舞われると、生産者は生産調整の強化の大合唱となった。政治的に問題を解決しようとしたのであり、今年はそれも無い。行政指導による生産調整などで問題が解決しないことを業界は理解したのだ。業界は成熟した。経済の問題は経済で解決していく。今までもそのとおりであったが、今年さらに明らかになるだろう。
 
米、牛乳、の世界ならいざ知らず、タマゴは今までも政治の力の外にいた。結果的にはそれが良かったのであろう。政治に頼らず自分たちで力をつけてきた。そして世界中でも一番タマゴのマーケティングに成功した。5000万人以上の人口を持つ国で、日本は一人当たりダントツの鶏卵消費量である。
 
これは鶏卵業界が戦後、競争を繰り返しコストを下げ、他の食品より「お値打ちなタマゴ」を国民に提供したからである。今年から来年にかけて、経営規模の大小を問わず脱落するものが出てこよう。そしてバランスがとれる。それに耐えることが避けられぬことであり、厳しいが日本の鶏卵業界を強くする道であり、消費者の皆さんに支持される道と確信する。

3/August/03

ぶらりぶらり通信 ホトトギスが鳴く その3

やっと梅雨があけた。今年の夏は低温続きのためか、いつもより遅くまでウグイスが鳴いていた。 それにつられてホトトギスも長逗留していたようだ。
 
以前にホトトギス談義をしていたら、等々力に住む蜜蜂の渡辺さん夫妻から声がかかった。信州眞田の高原にある山小屋に案内したいという。白樺林に包まれたこの地はウグイスほか小鳥たちの天国で、その時期には全山ホトトギス、カッコーが鳴き交わすと言う。
 
こう聞けばじっとしていられない。さっそくカミさんと長野の山小屋に向かった。渡辺さんの大事にしているこの山小屋は、二代目のもので隣に初代のそれも立派に管理されている。渡辺家の山荘生活は親、子、孫と三代にわたり半端ではない。
 
運の良いことにその晩は満天の星に恵まれた。寝転びながら見ていると、大きな一枚ガラスに映る星空と暗い林はまるで絵のなかに自分がいるような錯覚を覚えた。翌朝、小鳥たちの鳴き声で眼がさめた。これからコーヒーを沸かす湧き水を汲みに行くという。長靴をはき夜露に濡れる熊笹の路を急いだ。
 
一杯の朝のコーヒーを飲むお膳立ては出来た。白樺をとおして山荘に差し込む朝の光、小鳥たちの声、ベランダに用意された朝食、仲間との語らい・・・。
「旨い!。」
カミさんが素っ頓狂な声をあげる。忘れられない一杯のコーヒーとなるであろう。
 
どういうわけかこの日はウグイスは鳴けどホトトギスの声はなかったが、充分満たされていた。

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たまご屋おやじの独り言 2003年8月


31/August/03

ぶらりぶらり通信 「犬も歩けば棒に当たる」

「犬も歩けば棒に当たる」とはよく言ったもので、先日思いがけず面白い物にぶつかった。

私の住んでいる岡部町から高速道路に乗れば2時間で長野市に着いてしまう。冬のオリンピック以来ずいぶん便利になったものだ。お目当ては上林温泉、塵表閣の混浴野天風呂で、近くの松浦さんの家族に同乗させてもらい、お嬢さんの運転で出かけた。

少々時間が有るというので途中小布施町に寄った。カミさんたちは前にも来たことがあるそうだが私は初めてであった。小布施町北斎寺(岩松院)と落雁が旨いと聞いてはいたが、今では「人の集まる街作り」で有名である。
 
なるほど街には若い娘さんたちがいっぱい遊びに来ている。それにつられて若い男どももやってくる。善光寺参りのついでにやってくるジイサン、バアサンだけを当てにしなくてもよい。

この街には余程の知恵者がいるらしい。一つのしっかりしたプランとコンセプトのもとに毎年この街は確実に成長している。確かにこの前来たときより良くなっていると誰でも言う。

私はこの町の岩松院にある北斎の天井絵「八方睨み鳳凰図」を見て正直肝をつぶした。こんなに大きな迫力のある日本画は見たことが無い。画題は中国から貰っているとはいえ、北斎のオリジナルなデザインはまったく凄いものだ。

その夜、混浴野天風呂を楽しんだのは言うまでもない。ただし女性が特製浴衣を身に着けているのがちょっとだけ気に入らなかった。

31/August/03

寒さの夏はおろおろ歩き・・・

日照り(雨不足)の時は涙を流し、寒さの夏(冷夏)はおろおろ歩き・・・。

ご存知、宮沢賢治の歌である。37歳の若さで彼は世を去っているが、残したものはあまりにも多い。
今年、北海道、東北3県は大変な冷害と聞く。私のいる埼玉県熊谷地区は日本でも最高気温を記録するところだが、今年はやはり冷夏である。稲作の人達には申し訳ないが、鶏たちにとっては暑さによる熱死もなく過ごしやすい夏となった。
 
一方、EUからの便りによれば、今年は異常に暑く、養鶏産業にその影響は大きく、特にフランスの北西部では百万羽のブロイラーが熱死している。いまだかって経験した事のない暑さと言われるから、いつもは夏涼しいヨーロッパは暑さに対する備えは出来ていない。ブロイラーのみならず採卵鶏にも影響がでたと容易に想像できる。
 
このため鶏肉の値段が15−35%値上がりし、漁夫の利を得たのはタイ、アメリカでそこからの輸入が急増している。タイから日本へ輸入される鶏肉の値段も急騰した。異常気象は世界中の農畜産物の値段を撹乱する。
泣く人、笑う人、世はさまざまだ。いつなん時この立場は逆転しないともかぎらない。

17/August/03

GOOD NEWS アメリカの鶏卵消費量大幅UP
 
前回、台風と停電について心配事を書いたら、NYにて史上最大の大停電が起きた、クワバラ、クワバラ・・・まったく、なにが起きるかわからない。

GOOD NEWSをひとつ
近年アメリカで、鶏卵の一人当たり年間消費量が大幅に上昇している。6年以前それが235ヶであったものが、昨年(2002年)は254ヶと推定されている。

ヨーロッパなど先進国の鶏卵消費量は依然として横ばいか減少しているなかで、なぜアメリカのみが回復したのだろう?

「タマゴとコレステロールの呪縛」にアメリカはじめヨーロッパ諸国の鶏卵業界は徹底的に苦しめられた。1960年代初期、アメリカは鶏卵消費量年間一人当たり400ヶを超えていた、これが1990年代初期220ヶ代に落ち込んだ。大きな理由は「タマゴとコレステロール」問題であった。

以来アメリカの鶏卵業界はこれが科学的に間違いであることを訴え続けた。幸い最近ハーバート大学の11万人に及ぶ大規模な疫学調査の結果、健常者であればタマゴ一日一ヶ摂取はなんらコレステロールと関係ないとの結論となった。

また日本などタマゴを世界一たくさん食べる国が心臓病が少ないことがはっきりし、タマゴが悪者なのではなく、要は食事のバランスであり、カロりーのコントロールであることがアメリカ人にも判ってきたのがその理由である。

この間、アメリカの鶏卵業界が手をこまねいていた訳ではない。懸命になってPRに努めた。その努力の一端が下記HPに見られる。

24/August/03

ヒヨコは誰がつくるの?

採卵用のヒヨコをつくる種鶏孵卵業界がすっかり変わってしまった。その激動の歴史はそれだけでひとつの物語となる。

私は採卵養鶏家サイドにいて、専門農協による種鶏孵卵事業にかれこれ30年以上携わってきたが、これはとても難しい仕事だ。個人企業でそれこそオヤジがシャカリキになってやっても難しい仕事なのに、まして組合での経営となると尚更だ。
 
そういうわけで、30年まえ全国で実質的に活躍されていた孵卵場は500軒以上あったものが現在ではその一割もない。専門農協では私どもの神奈川養鶏連のみとなってしまった。幸い組合は人を得たことと、これを支えた採卵家の連携プレーで設立いらい50年持ちこたえることができた。

採卵養鶏家にとって困ることは、選択できる孵卵場の数が減ってしまうことと、同時に選択できる鶏種が少なくなってしまうことだ。ところが現実にはこの30年間確実にその方向に向かっているし、近い将来さらにそれは進むであろう。

そのなかで専門農協として孵卵場が生き残る道は一つしかない。それは「さらなる採卵家との連携プレー」につきるであろう。機能分担して、ヒヨコをつくる人、タマゴをつくる人が一体となってことに当たる。幸い食品の安全性が問われる今、本当に安全なタマゴをつくるには、ヒヨコにまでさかのぼる必要がある。
「自分たちのヒヨコは自分たちでつくる」組合設立の原点に立ち戻らざるを得ない。

24/August/03

ぶらりぶらり通信 「邂逅(かいこう)」

世の中には凄い人がいるものです。

自分が脳梗塞で倒れた経験があるものだから、新聞や本を見ていてもその手の記事には自然と眼がゆく。特にその病気に倒れ、障害を持ちながら残された機能を生かし、社会復帰している人たちの話には心を動かされる。

世界的に活躍されていた免疫学者の多田富雄先生は、2年前突如脳梗塞で倒れられ、それもかなり重症であった。言葉を失い、半身麻痺、食べ物を飲み込むことも出来ない状態に追い込まれ、学者としての生命は絶たれた。その時の心境を率直に書かれているが、とても悲しくて読みとおすことが出来なかった。
 
社会学者の鶴見和子先生も5年まえ脳出血で倒れた。現在でも車椅子の生活であるが、病後、頭が冴えて若いときにやっていた短歌が際限なしに湧き出てくると言い、病後短歌集「回生」を出版されたほどである。
 
脳卒中の後遺症は人によって千差万別である。幸いお二人は思考回路と記憶の部分が残った。 この二人が最近対談集「邂逅(かいこう)」(藤原書店)を出された。往復書簡をもって構成されているこの本はかなり専門的で決して読みやすくはないが、読む人を勇気づける。
 
学者としての生命を絶たれても、残された機能を最大限生かし、その人ならではの発言には深く感動する。言ってはなんだが、病院でもらってくる若い先生処方の脳卒中の薬より、この本のほうが効きそうである。

17/August/03

ぶらりぶらり通信 インターネット書店

本を読むのは楽しい。面白いもんで、読めば読むほど次に読みたくなる本が出てくる。さぼっていればそれが出てこない。

現役時代は仕事関連のそれらを無理やり読んだが今はそれも無い。有り難いことに気の向くまま好きなものを選べるから不思議だ。書店の棚をひやかして歩くのはなんともいえない快楽のひとつである。そこには自分の知らない世界が拡がっているからだ。

さらに最近、インターネット書店の面白さにやみつきになってしまった。ご存知、紀伊国屋書店BK1、アマゾン・・・などネット書店が繁盛している。 各社それぞれ独自の書籍データベースを競っているが、これが実に楽しい。著者、書名、出版社、ジャンル・・・等、如何様にも検索、一覧表示、並べ替え可能なのだ、まるで図書館の検索室が自宅に引っ越してきたみたいだ。

ちょっと前ならまるで夢のようなことが自宅のPCで出来る。若い世代にとっては当たり前のことだろうが私等の世代にはまるで魔法に近い。

という訳で、興奮のあまり読みもしない本を買い込み、家中はごみ箱と化してしまった・・・カミさんの機嫌が悪い。

10/August/03

台風一過

台風10号が全国に被害を残して通り過ぎ、そして暑さが戻ってきた。台風で恐ろしいことは色々とあるが、最近の養鶏家にとっては停電が最も恐ろしい。特にこの頃の鶏舎はウィンドウレスで自動化が進んでいる。気温の高いこの時期は一刻も電気無しではいられない。確かに緊急時の発電機は用意してあるが、たいてい最小限のものしか用意されていない。ましてや2−3日以上にわたる停電など未経験なので、無事切り抜けられるか心配の種はつきない。

今年の夏、原子力発電のトラブル隠しで発電がストップし、日本に大停電が心配された。このようなピンチの時、さすが日本人は各人それぞれの立場で良識を発揮して事なきを得た。大停電が起きればその被害ははかり知れない。現にアメリカ、カ州でのそれが現実に起き大問題となった。

悪い悪いと言われた日本の経済もどうやら底を打ったらしい。マスコミは日本の現状を必要以上に悪く言いたがる。良い状況があっても取り上げない。まるで良くなっては困るみたいだ。
 
日本の鶏卵業界も戦後最低の卵価と騒いでいるが、世界の鶏卵業界の状況に比べればこんな恵まれた国はない。世界最大の一人当たり鶏卵消費国にいながら贅沢は言えない。
日本の鶏卵業界は「経済の問題は経済で解決する」、下手政治が絡むとややこしくなる。

10/August/03

ぶらりぶらり通信 「戦場のピアニスト

大分遅まきながら深谷の映画館で「戦場のピアニスト」を観た。

いつもは十人前後の観客も、この晩は大入りで三十人前後入っていた。と言っても満杯で50人なのであるが。上演に先立ち館主が挨拶するのものこの映画館らしい。今日は昼の部二回とも満員であったとのこと、さすがに嬉しそうであった、たとえ観客が2−3人であっても、ここでは真面目に上映してくれる。なんとか長続きして欲しいものだ。
 
みっともない話だが、病気をしてから感動することがあると、ところ構わずまず身体が反応して嗚咽してしまう。とにかくこの映画には泣かされた、周りの人が怪訝そうにこちらを見ていてもお構いなしである。

物語は第二次大戦、ナチの占領下ワルシャワで生き抜いたユダヤ人ピアニスト、シュピルマンの実話である。何故か破壊しつくされたワルシャワの街を泣きながら一人行く主人公に、横浜大空襲の晩を想い重ねていた。

親父が「これが横浜の見納めだ」とばかり、防空壕に隠れていた小さかった家族全員を外に出し、空襲によって赤々と燃える横浜の夜空を見せた。

同時代、シュピルマンはゲットーを逃げ出し、奇跡的に生き延びていたことになる。映画が終わっても立ちあがる人はいなかった。エンディングに使われたショパンピアノ曲があまりにも凄かったから・・・。

6/August/03

<日本たまご事情>どうして卵はこんなに安いの?

今年の卵価は戦後最安値が予測される。理由は需要をこえた生産過剰である。
採卵業界は戦後何度となく低卵価と高卵価を繰り返してきた。これではならじと業界を安定させるべく種々な対策がたてられた。行政指導による生産調整はその最たるものであろう。これも長年試行錯誤したが十分機能したとは言え無い。
 
以前なら、今年のような低卵価に見舞われると、生産者は生産調整の強化の大合唱となった。政治的に問題を解決しようとしたのであり、今年はそれも無い。行政指導による生産調整などで問題が解決しないことを業界は理解したのだ。業界は成熟した。経済の問題は経済で解決していく。今までもそのとおりであったが、今年さらに明らかになるだろう。
 
米、牛乳、の世界ならいざ知らず、タマゴは今までも政治の力の外にいた。結果的にはそれが良かったのであろう。政治に頼らず自分たちで力をつけてきた。そして世界中でも一番タマゴのマーケティングに成功した。5000万人以上の人口を持つ国で、日本は一人当たりダントツの鶏卵消費量である。
 
これは鶏卵業界が戦後、競争を繰り返しコストを下げ、他の食品より「お値打ちなタマゴ」を国民に提供したからである。今年から来年にかけて、経営規模の大小を問わず脱落するものが出てこよう。そしてバランスがとれる。それに耐えることが避けられぬことであり、厳しいが日本の鶏卵業界を強くする道であり、消費者の皆さんに支持される道と確信する。

3/August/03

ぶらりぶらり通信 ホトトギスが鳴く その3

やっと梅雨があけた。今年の夏は低温続きのためか、いつもより遅くまでウグイスが鳴いていた。 それにつられてホトトギスも長逗留していたようだ。
 
以前にホトトギス談義をしていたら、等々力に住む蜜蜂の渡辺さん夫妻から声がかかった。信州眞田の高原にある山小屋に案内したいという。白樺林に包まれたこの地はウグイスほか小鳥たちの天国で、その時期には全山ホトトギス、カッコーが鳴き交わすと言う。
 
こう聞けばじっとしていられない。さっそくカミさんと長野の山小屋に向かった。渡辺さんの大事にしているこの山小屋は、二代目のもので隣に初代のそれも立派に管理されている。渡辺家の山荘生活は親、子、孫と三代にわたり半端ではない。
 
運の良いことにその晩は満天の星に恵まれた。寝転びながら見ていると、大きな一枚ガラスに映る星空と暗い林はまるで絵のなかに自分がいるような錯覚を覚えた。翌朝、小鳥たちの鳴き声で眼がさめた。これからコーヒーを沸かす湧き水を汲みに行くという。長靴をはき夜露に濡れる熊笹の路を急いだ。
 
一杯の朝のコーヒーを飲むお膳立ては出来た。白樺をとおして山荘に差し込む朝の光、小鳥たちの声、ベランダに用意された朝食、仲間との語らい・・・。
「旨い!。」
カミさんが素っ頓狂な声をあげる。忘れられない一杯のコーヒーとなるであろう。
 
どういうわけかこの日はウグイスは鳴けどホトトギスの声はなかったが、充分満たされていた。

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