たまご屋おやじの独り言 2003年9月

たまご屋おやじの独り言 2003年9月



29/September/03

日本家禽学会 産学交流促進

9/27,28の二日間岐阜大学において日本家禽学会が開催され、後藤孵卵場の後藤悦男社長が委員長をされている産学交流促進委員会に出させてもらった。

ここでの主な議題は「家禽学会研究者、技術者データバンクの構築」であった。この計画は既に進められていてデータ構築の段階にある。 この学会を機会に更にPRにつとめ、登録者が100名を超えた時点で一般公開する予定とのこと。これは家禽の研究者、技術者と家禽産業界のニーズとを「お見合い」させるシステムで、お仲人さんには学会のしかるべき先生になっていただく。

とにかく学会のほうが積極的にこの課題に取り組んでいただけるのは有り難いことだ、産業界もこれに応える必要がある。 資源のない日本が世界のなかでこれまで来れたのも、それに代わる人間という資源があったからに違いない。少なくなったとはいえ、家禽学会には500人を超える会員がいる、大学、県及び民間の研究所がそれを支えている。

50年の歴史をもつ家禽学会の人材と業績はまさに財産である。 研究者、技術者データバンクの構築のみならず、並行して業績のデジタル化も進んでいる、近い将来IT技術を駆使して何処でも誰でもそれ等を埋もれることなく生かして使えるに違いない。

日本家禽学会ホームページ http://wwwsoc.nii.ac.jp/jpsa/

27/September/03

ぶらりぶらり通信 櫛挽ヶ原 曼珠沙華(ひがんばな)

天候不順の夏とは言っても、秋の彼岸には私の住んでいる櫛挽ヶ原にも鮮やかな季節の変化が現れる。いつのまにか曼珠沙華(ひがんばな)の白い茎がするすると伸びて赤い花をつける、夏の盛りを過ぎてあたりが静かになった時だけにこの花は異様に目に映る。

防風林の中にぽつんと一輪この花が咲いていると、
「地面(じべた)のしたに棲む人が線香花火をしている」
のだと金子みすずが詠ったのを思い出す。

山栗が実ってたくさん地に落ちている、これを拾って帰るのも楽しみだ。ここでも養殖の栗が植えられているが、あまり熱心に手入れがされていない。もう実っているのに誰も収穫に来ない。かわりに少々失敬させてもらう。山栗は小さくて剥きにくいが味はほくほくしていて最高だ。そこへいくと養殖ものは大味でしまりがない。

昨日はカケスがやってきた。ひろげた羽の模様がきれいだ。涼しかった夏に今年は遅くまでウグイスが鳴いていた。それにつられてホトトギスが居座っていたのもほんの少し前の気がする。

シジュウカラの群れが元気よく木々の間を通り過ぎる。たしかに鳥どもも主役は完全に代わっている。まもなく櫛挽ヶ原にほんものの秋がくる。  

20/September/03

鶏卵 Q熱 人間の病気?

誰かが無理やりに「鶏卵 Q熱 病気」を結びつけようとしている。日本、また世界中どこの国でも問題になってないことを、ことさら騒ぐ事によって利益になる連中か、売名行為であろう。昨年にも一部マスコミで取り上げられたが、問題にならなかった。

9月16日、東京都の保健所に勤める医師が、その危険性を訴えてマスコミ相手に緊急記者会見をした。組織の人が個人の立場で会見したのもおかしいが、その基礎となるデータも人さまの借り物とは恐れ入る。

内容は「調査した鶏卵の6%はQ熱病原体に侵されているから危険だ」というもので、前回と変わらない。今回も一部マスコミ、テレビが取り上げた。
http://health.nikkei.co.jp/news/top/topCh.cfm?id=20030916e002y85916

養鶏、鶏卵業界のQ熱に対する公式見解は日本養鶏協会のホームページ
http://www.jpa.or.jp/news/media/index.html
にあるとおりで、「鶏卵 Q熱 病気」は大袈裟に騒ぐほどの関係はない。

20/September/03

ぶらりぶらり通信 「山の郵便配達

深谷の街に映画館(深谷シネマ)が復活してから丁度一年になる。それを記念して「山の郵便配達」が上映されたので出かけた。オープニングの時も同じものが使われたので、この映画館は余程この映画には思い入れがあるのだろう。

私はまだ行ったことがないが、東京神田に岩波ホールがある。知る人ぞ知るで確か30年間近く、世界中から値打ちのある映画を見つけ出し、これを上映してきた。"良い映画"必ずしも興行的に成功するとは限らない。否むしろその逆であろう。その中で頑なにそのポリシーを変えず、それを継続してきたことは驚嘆に値する。

山の郵便配達」はこの岩波ホールが2001年4月に初めて上映したと、記録に残っていた。この岩波ホールの精神が深谷シネマに乗り移ったかのごとく、この一年間頑張ってくれたのはとにかく有り難い。

この映画は1980年代中国、湖南省の郵便配達親子の物語であるが、見ていてなんともすがすがしい。映し出される山村の生活とその風景は、おそらく数百年、或いは千年を超えて維持、継続されてきたものであろう。

ストーリーはちっともドラマチックなものではなく、見せ場という見せ場もない、それでいて見終わった時には充分満たされた想いがした。

映画とは不思議なものである。

16/September/03

ぶらりぶらり通信 「犬も歩けば棒に当たる」 その3

岩松院にある北斎の天井絵「八方睨み鳳凰図」の印象が余程強烈であったせいか、このところ北斎が気なってしょうがない。

急に親父虎松が大事にしていた「富獄三十六景」を思い出した。北斎の版画である。あれは確か横浜の愛鶏園記念館にあるはずだ。

92歳まで生きた親父は横浜の古い農家に次男坊として生まれた。当時どこでもそうであったように長男以外は農家の跡を継げず外へ出された。親父の場合は東京日本橋金物屋の小僧に出された。働きが認められて関東大震災のころには番頭格になっていたという。震災復興の無理がたたり、結核となり、実家に戻った。当時結核に特効薬はなく多くの若者がこれによって命を落とした。

養生がてら自分に栄養をつけるため十羽のニワトリを飼いタマゴを得た。これが私ども愛鶏園の始まりである。ゼロからスタートした親父、おふくろはそれこそ夢中で働いた。

後年、息子どもが養鶏の跡を継ぎ、時間的にも、お金の面でも余裕が出来ても、質素な生活は変わらなかった。八十歳を過ぎたころ、身の回りを整理すると言うので、愛鶏園の記念館を建てた。中に入っている物は、言っては悪いが金目のものはなく、他人様にとってはガラクタ同然のものである。しかし親父たちにとっては、記憶の詰まった本当の宝物であったに違いない。

親父は北斎の「富獄三十六景」が好きで、そのせがれに富士雄と名づけたほどだ。若い時からこれが欲しかったが我慢していたらしい。終戦のドサクサで戦前の貨幣が使えなくなったとき、親父は神田の古本屋に飛んでゆき、欲しかった本をどっさりと、これを手に入れたと聞いている。親父が初めてした贅沢だったとおふくろは話していた。

北斎が江戸から小布施へ行き、あの鳳凰図を描いたのは八十歳を過ぎてからだと言う。その凄さはけた違いだ。これでは当分北斎にとりつかれそうである。

16/September/03

<日本たまご事情>男はタマゴを毎日2ヶ食べると心筋梗梗塞で死なない?

先日、毎日新聞の記事に 、
「女性の死亡率 毎日卵2個以上食べると2倍に」という記事が出ていました。
http://www.mainichi.co.jp/women/news/200309/09-04.html

私どもタマゴ屋には、心臓が止まりそうになる悪い記事です。早速調べてみましたら、この事についていろいろな事がわかってきました。

この記事のもとになった日本心臓学会における滋賀医大島弘嗣先生の、
「鶏卵摂取量と総コレステロール値、総死亡率、心筋梗塞死亡率の関連」の発表要旨及び添付表を見てみますと、その発表主旨は誰が読んでも新聞記事とは異なります。

「女性の死亡率 毎日卵2個以上食べると2倍に」とセンセーショナルなタイトルになっていましたが、これは上島弘嗣先生の発表主旨とは違います。確かに卵2個以上食べる女性は心筋梗塞死亡率が2倍になっているデータが発表されています。ところが同じ欄に卵2個以上食べる男性は心筋梗塞死亡率ゼロとなっています。ただしこれらは、いずれも他のデータ数に比べ極端に少なく、結論を出すには充分でないと思われます。

タマゴのマイナスイメージのみを強調した悪意のある記事としか考えられません。えてして新聞はニュースになりそうな事を面白おかしく書くきらいがあります。その逆も真実です。それによって被害を受ける側はたまったものではありません。

同じ学会発表要旨を見て記事を書いているのですから、
「女性の死亡率 毎日卵2個以上食べると2倍に」なるなら
「男はタマゴを毎日2ヶ食べると心筋梗塞で死なない」も事実です。
近々日本養鶏協会のほうで上島弘嗣先生に会いその発表主旨を確かめてみるとの事です

6/September/03

ぶらりぶらり通信 「犬も歩けば棒に当たる」その2

前回、小布施町にある岩松院に北斎の天井絵に肝をつぶした話をしましたが、この寺は同時に小林一茶にも縁がある。

"やせ蛙 負けるな一茶 これにあり"
の句はこの寺の池の辺で詠まれたと石碑が建っていました。現にその池がありました。今でもヒキガエルの繁殖期、何百となくこの池に集まって雌を争って雄ガエルが取っ組み合いをするそうだ。

"盃に 蚤およぐぞよ およぐぞよ"
同級生のカバさんが、以前イザベラ・バードの蚤談義をやっていた時おくってくれた一茶の句である。もっとも今、蚤がいなくてはこの面白さは判らなくなってしまったが。

一茶といえば天衣無縫で、どこかユーモラスな句で知られているが、
"露の世は 露の世ながら さりながら"
というシリアスなものもあります。この句を知ったのは免疫学者多田博士の「邂逅」を読んでいた時です。

博士は脳梗塞で倒れ死の淵より生還し、重い障害に苦しみながらも生きながらえている心境を一茶のこの句に託している。一茶は52歳で結婚しニ児を得たが次々と幼くして亡くす、そのときに詠んだ句だけに底知れない悲しみが伝わってくる。

支離滅裂に話は北斎から一茶に飛んでしまったが、とにかく小布施は不思議な街だ。私に俳句談義をさせるのだから・・・。

4/September/03

ためしてガッテン

9月3日、NHKの人気番組「ためしてガッテン」にてタマゴ料理が取り上げられた。「たまご料理の裏ワザ」として、シンプルだがつくり方の難しいオムレツ、茶わん蒸し、プリンの作り方をプロとアマチュアの違いを分りやすく紹介していた。

誰でもあの美味しそうなオムレツをみれば自分で試したくなる。テレビの凄くて怖いところだ。

このところ、日本ではタマゴがあまりにも安くて、それに同情してくれるせいか?マスコミのタマゴに対しておおむね好意的だ。これに反してアメリカ、ヨーロッパでは不幸なことに、コレステロールサルモネラ問題で執拗にタマゴをマスコミは叩いた。結果的にはそれが科学的に誤りであることが分っても、一度落としたイメージはいまだに消えない。

このことにアメリカ、ヨーロッパの鶏卵業界はいまだに苦しんでいる。日本はその轍を踏むまい。 早速NHKのこの番組をビデオに撮り、タマゴ直売所ほかで映すことにした。

なおこの番組についてはNHKのHPを参照されたい。
http://www.nhk.or.jp/gatten/archive/2003q3/20030903.html

△上に戻る