病気の効用

現役を半分引退してから何が嬉しいと云ったら、自分のために使える時間が増えたことにつきる。今までも自営業であるから、自分の好きなことをやって来たではないかと言われそうだが、仕事であれば楽しいことばかりがある訳ではない。今は贅沢なことに、半分は自分の楽しいことに使える。

四年前脳梗塞で倒れたとき、身体と脳の機能が突如落ち込んだ。一気に20歳以上歳をとると、こんなことになるのかなと思ったりもした。有難いことに徐々に機能は回復してきているが、戻らない部分もある。左脳をやられたから、相対的に右脳が元気になったお陰で不思議なことが起きた。今まであまり興味を持たなかった世界をオヤッと思うようになったのである。

カミさんはどちらかと言えば右脳で生きているようなもので、左脳専門の朴念仁の私とは正反対である。これでよく喧嘩別れをしないで永年やってこられたものだと思う。入院中、カミさんはしきりと音楽CDを病室に差し入れしてくれた。これを機会に洗脳しようと企んだらしい。ヒマだったから、これ等を何度も繰り返して聴いた。

あろうことか、いまでは静かに一時間でも二時間でも聴いていることができる。今までになかったことだ。それどころか外出時、携帯オーディオ(?)に好きな音楽を詰め込み道中これを聴く騒ぎである。病気の効用というものがあるとすれば私には変なことが起きた。