ウグイ

櫛挽ヶ原はいつ散歩しても面白い。
お薦めはやはり初春から初夏にかけてであろうか、特に防風林の眼の覚めるような変化が美しい。
その一本一本の樹木は何の変哲もないナラ、クヌギ、赤松、、、などの雑木であるが、開墾する前からここに自生していたもので自然の植生のものであろう。

好みの散歩道は防風林ぞいにあり、ここには一年を通じて灌漑用水が流れている、この水源は荒川であり、水が絶えることはない。
櫛挽開拓の先輩たちは干害に苦しんだ、永年かけて運動し念願かなって水路をつくり今ではバルブひとつでどの畑にも水を引くことが出来る、先輩たちの苦労のお陰である。

散歩の途中いつもこの用水路を覗くのが楽しみである、水路幅は2メートルに満たないが水深はいつも70−80センチあり流れは速い。
何ヶ所かに用水の方向を変える水の溜まり場がある、ここは水深が数メートルはあるだろう。
ここに荒川本流の魚たちがまぎれ込む、水がきれいな時期はその魚影がはっきり見える。
今はウグイがやってくる時期らしく、20センチを越える大物が群れをなしていた。
それをを見たとき子供のころを思い出し急に胸が熱くなった。

子供のころ私は横浜の田舎で育った、学校から帰るとカバンを放り出し近所の小川で小魚を追いかける毎日であった。
このウグイには特別の思い入れがある、ある日小川のよどみにとてつもなく大きなウグイを見つけ(子供の目にはそう映った)、長時間追いかけ回してついに仕留め、家にもって帰り親父にえらく褒められた。
不思議なことに今でもその時の小川の状況を鮮明に思い出す。