接してもらさず

ひょんなことから江戸時代の健康法に興味を持ち、貝原益軒の養生訓を最後まで読み通してみた。
原文は少々読みにくいので現代語訳とズルを決め込んだ。
読んでみて正直驚いた、とても面白く新鮮にさえ思えた。
これは約300年前、貝原益軒が83歳の時に書き残したものであり、そして益軒はその翌年亡くなられた。
当時80歳以上まで生きられる人は極めて稀であったに違いない、ましてやその歳で後世に残る書物をものにするとは。

江戸時代の「スーパー老人」の一人として、益軒先生の言葉は説得力があったに違いない。  
今で例えるならばさしずめ聖路加病院の日野原 重明先生あたりであろうか、90歳を超えなお現役として多方面に活躍されている。
養生法(健康法)を説く先生が若くして倒れたのではとても説得力がない。

「納豆を食べるとやせる?」TV番組の捏造事件で大騒ぎだが、番組に乗せられて店に納豆を買いに殺到する消費者ももっと問題である。
「何々を食べれば健康になる」筈はなく、益軒先生も「いろいろな食べ物を摂りなさい、食べ過ぎが一番身体に悪い」と300年前にすでに言っている。

養生訓には飲食についての記述が実に多く、興味がつきない。
江戸時代に人々が何を食べ、何に気を付けていたのか、病気になった時の対処のしかた、良い医者とそうでない医者の見分け方、すぐ薬を出すのは悪い医者など、、、実に詳しく書いてある。
セックスについて述べたあの有名な「交接してもらさず」「年齢別その回数」などほんの一部にすぎない。

勿論現在の医学からすればおかしな部分もあるが、何せ300年も前に書かれたものである、それよりも人間の健康を全体的にとらえ、精神と身体のバランスの上に健康は成り立つのだという考え方が全体を貫いている。
多くの健康情報に振り回される今の人たちを益軒先生は笑っているような気がする。