櫛挽ヶ原 春一番

今年は一度も雪を見ないで春を迎えそうである。
寒くないのは助かるがここは関東ローム層の真っ只中、畑が黄色に乾いている。
この時期、畑にある作物はごくわずかで、地表をおおう緑は少ない。
以前ここ櫛挽ヶ原は酪農家が多く、冬作に牧草を作っていたのでこの時期に多く緑が見えたが、今は少なくなってしまった。
この時期、櫛挽ヶ原を歩いていて緑の牧草地に出会うとほっとする。

先日ここにも春一番の強風が吹き荒れた、黄塵万里空全体が黄色くなった。
風は畑の表土を吹き飛ばし巻き上げる、この日ばかりは櫛挽ヶ原にある見事な防風林も役に立たない。
各農家は洗濯物を家のなかに取り込みじっと風の収まるのを待つ。

私はこの櫛挽ヶ原が好きだ、どの時期歩いてみても飽きない。
東西に直線で4Km南北に3Km、畑を囲むように道路と防風林があるが、幹線道路を除き車はほとんど通らない。
まして人通りは農作業をする人たちを除いてほとんどない。
時には一時間歩いていても誰にも会わないことがある、申し訳ないが私の専用道路みたいなものである。

戦後、櫛挽ヶ原の開拓時代は先輩たちが大変苦労された、いまやその二世の時代になっている。
これらの人たちが自分たちの住む環境の素晴らしさに気がつき、先代の残してくれた財産を生かそうとしている、大変嬉しいことだ。
40年前私はこの土地に惚れ込み入埴させてもらったが、間違いはなかった。