置賜さくら回廊

先輩のU夫妻に誘われて山形の桜を見に出かけた。
W夫妻を交えて都合三組の老夫婦は朝の早い山形新幹線に乗り合わせた。
すでに関東地方では桜の花は終わっていたが、列車が北に上るにつれ季節は逆戻りしていく。

東京から2時間少々で目的地赤湯温泉につき、「滝波」に宿をとった。
この宿は三百年まえの庄屋の屋敷を移築したものでなかなか趣がある、この宿の前から「置賜さくら回廊」を一日がかりで巡るバスに乗り込んだ。

小雨のなか、その地域が大切にしている桜の銘木を見てまわった、この地方の桜の銘木は皆「エドヒガン」の枝垂桜であり、豪雪に耐え数百年なかには千年を超えて咲き続けているそれらに圧倒された。
特に樹齢千二百年といわれる「伊佐沢の久保桜」には圧倒されるどころか恐れすら感じた。
冷たい小雨のなか緋色に染まった三分咲の桜の姿を忘れないであろう。

若い時は「ソメイヨシノ」も美しいが、歳を重ねるにつれて「エドヒガン」が断然よくなるとは老人どもの一致した感想であり、花見の日が天気であろうが無かろうが充分それを楽しめる事でも皆共通していた。
桜をみると皆元気が出るらしく、大広間で行われた宿の名物朝食「餅つき」の実演と試食ではつきたての餅を各人10ヶ以上をぺロリとかたずけていた。