秩父歩き遍路 その三

今日は十二番札所の野坂寺から十八番の神門寺まで歩いた。
それらは秩父市の市街地にあり、今までと違い交通が激しい、眼と耳のどちらかが少々悪い二人の老遍路者にはきつい所である、遍路にきて交通事故にあったのではお笑い種だ。
お寺で休んでいると、借りきりバスで乗り付けた元気の良いおばさん遍路団に出くわした。
彼女らは完璧な白の遍路服を身にまとい、杖、菅笠と申し分のないいでたちである。
まづユニフォームを整えると気分は引き締まるものと思われる。

そのリーダーと思われる一人が、納経帳を取りまとめて納経所に差出し、手際よくお寺にサイン?してもらっている。
そうでもしなければ効率よく遍路を済ますことは出来ないらしい、彼女らは一日に一体どれだけのお寺さんを回るのであろうか、われわれ二人はあっけにとられ見守っていた。

街中のお寺は参拝者が多い、本堂の前で相棒のKさんが亡くなった奥さんの短歌を読み上げ、私が般若心経を読み上げていると、次々に参拝者が現れた、この場合先の者は席を右にずらして次の人の場所をつくるのがお寺の礼儀であると参詣者の一人がそっと教えてくれた。
我々は知らないものだから痛く恐縮した、その人の注意の仕方が実に穏やかで、注意されているにもかかわらず感心してしまった。

昼時、目当てにしていた蕎麦屋が休みでがっかりしたが、気をとり直して最後の神門寺に向かって140号国道を歩いていると、運良く「ちちぶ屋」なる蕎麦屋にぶつかった。
ざる蕎麦と山菜のてんぷらを頼んだがこれが当たりであった、秩父なら蕎麦はどこで食べても間違いはないと誰か言っていたが、そのとおりと思った。
仕上げは和銅鉱泉でお湯につかり痛んだ足腰を伸ばしたが、この時間他に客はなく二人の借り切り風呂となった。