鶏と動物愛護問題

前回、遊牧民族と農耕民族との間に動物あるいは家畜に対する接し方に違いがあることを述べた、このことが動物愛護問題にも大きな差となって現れてくる。
具体的に私どものタマゴ業界のことを話してみよう、ご存知のことかどうか現在日本国内で95%以上の採卵鶏はケージ飼育(鳥かご飼育)されている、つまり地面から切り離された籠飼育なのである。

よくTVなどで放映されるが、狭い鳥かごの中に鶏が一杯詰まった状態でそれは飼育されている、おそらくそれを見た一般の人たちは「こんな狭い所で鶏さん可哀そう」と言われる。
たしかに良い天気で広々とした野原の中で駈けずり廻る鶏たちは幸福そうに見える、人間の眼にはそう見える。

農耕民族の日本では「鶏さん可哀そう」ですんでいるが、遊牧民族のヨーロッパでは違う、EUは法律でこのケージ飼育を止めさせようとしている、現在EU加盟各国がその賛否を争っているところだ。
ヨーロッパにおける動物愛護運動は過激である、ケージ飼育の大農場に忍び込んで鶏をケージから「開放」と称して勝手に引き出す、勿論これは違法であるが、これを正義の味方よろしくマスコミが取り上げる、それを拍手喝采する大衆がいる。

私たち鶏を長年飼っている者にとっては、一見自然に見える野原に鶏を飼うことほど恐ろしいことはない、雨風や雪の心配をしなければならないし、犬、狸、あらいぐま、鼬、狐、青大将、、、が未だに攻めて来る。
よしんば部屋の中に囲い込んで土の上で平飼にしても、土を媒介とした伝染病の脅威から逃げ出せない。
タマゴ業界の先輩たちが苦労してやっと見つけだしたのがケージ飼育であったのだ、賢明な農耕民族である日本人が遊牧民の真似をするとは思えないが動物愛護の問題は根が深い。