荒川の白鳥

先日、深谷市新井市長と市内畜産団体役員との話し合いがあった、近隣町村との合併で深谷市は埼玉県内でも最右翼の畜産産地となった、昔から葱の生産では全国的に有名であるが、野菜、花卉、植木の生産でもならしている。
合併した深谷市は鶏卵、肉牛の生産では県内一番であるし、酪農、養豚もがんばっている、つまり東京にちかい埼玉県南部ではもう畜産は無理で、県北の深谷市に集中してしまったのが実情のようである。

畜産も戸数が増えれば、同業者組合も結成される、市長との対話集会には養鶏、酪農、肥育牛、養豚各組合の運営責任者が集まった、各組合ごとにその現状および現在の問題点が率直に出されたが、いま畜産業界に共通した問題は飼料の高騰問題である、これは日本だけでなく世界中この事で業界は混乱している、飼料原料を自国内で生産出来ようが、日本の様にそのほとんどを海外に依存していようが関係なく、原料価格は世界中共通の国際価格で決定される、丁度原油、鉄鉱石、石炭などの価格がその原料を自国で産出しようがしまいがその価格が国際価格と連動するのと同じである。
飼料価格の高騰は最初その負担は畜産農家にくるが、最終的には消費者の人たちの負担になる、この問題は市長といくら話したところで解決できないので、これまでのように業界の自助努力で解決するしかない。

深谷市の問題として養鶏組合は、市内を流れる荒川に来る白鳥の餌付け問題を取り上げた、旧川本町を流れる荒川に飛来する白鳥はこの近辺では有名である、更にその飛来を多くしようと地元の有志が餌付けをはじめた、大空を飛ぶ白鳥の姿はたしかに美しい。
だが困ったことが起きた、今年秋田、青森県にまたがる十和田湖と北海道で白鳥が数羽死んだ、原因は鳥インフルエンザH5N1型と確定され、その地区の養鶏業界はパニックに陥った、もし荒川の白鳥に同じことが起きれば深谷市もおなじ事になる、その場合市の人的、財政的負担は大きなものとなる、この問題で熱弁をふるったT組合長のおかげで市長もなんらかのアクションを起こしてくれそうだ。

最終的には鳥インフルエンザの問題はワクチンで解決されると思うが、政府はその段階でないと頑としてその使用を認めない、一旦それが発生すれば殺処分して根絶する作戦をとっている、そのリスク負担は全部生産者にくる、たとえ殺処分に対して補償金は支払われるが,その間に失ったお得意さんを取り戻す事は出来ない、このことは既に茨城県で経験済みである。
「そんな危険な仕事は止めてしまえばいい」と思われるかもしれないが、おっとどっこい、今までだって困難なことは必ず解決してきた、深谷市の空を自由に白鳥が飛べる日が必ず来る、それまで少しの間我慢してもらいたい。