補聴器

近頃ますます耳が遠くなった、45年以上聞き慣れているはずなのにカミさんの声が聞き取れない。
何回でも聞き返すので、お互いに大声になり時にはかんしゃく玉を破裂させることになる、家の中ならそれで済むが、外へ出るとなるとそうはいかない。

不思議なことに人によって、その声が聞き取り易い人とそうでない人がいる、私の場合特に低い声の人が苦手だ。
また話す場所によってもそれは違う、同じような部屋であっても良く聞こえる場合とそうでない場合があるので始末が悪い。
そういう訳で、一番困るのはたまに出る会議などで意見を求められる場合だ。
黙って座っていれば、相手は自分たちの話したことは全部理解されていると思っている、こちらは聞こえたふりをしてるのだから話は噛み合わない、時々発言すればトンチンカンなことを言うので、ついにあの人もボケたか、、、となる。

これではならじと、ある日意を決して補聴器屋さんに飛び込んだ、なにしろ初めてであるから様子がわからない。
相手はいろいろと調べてから、最近の補聴器は良く出来ていてあなたの耳穴の形に合わせてこれを作るので、それをつけていても他人にはほとんど分からないので人気がある、、、などと難聴者の弱みをつく事を言う、値段もかなり高い。
結局、両耳とも買わされて、喜び勇んで家に帰った。

以来半年、確かに良く聴こえる、だが雑音も良く聴こえる。
慣れないものをつけたりはずしたりするものだから、恐れていたとおりすぐ片方を何処かに置き忘れた、いずれ何処からか現れると呑気に構えていたが未だに現れない。
「耳が遠い人は長生きする」と人は慰めてくれるが、あれはどうもインチキらしい。

今日は愚痴を聞いてくれて有難う。