黒犬の話

奇妙なことがあるものだ。
先日、いつもの歩き仲間三人は榛名富士へ出かけた、途中まで登りかけたが天候の急変で雪になり途中で引き返した、スタートした榛名湖に戻ってみると雪は止んでいたが、あたりは春の雪で4-5センチ真っ白になっており、せっかく来たのであるからと榛名湖一周の歩きに切り替えた。

その時、一匹の黒犬が我々の前に現れたのである。
しげしげと我々老人三人組を眺めている、ちゃんとした首輪をつけているので野良犬でも無さそうだし、毛並みもそんなに汚れていない。

我々が湖面にそって歩き出すと、その黒犬は待ってましたとばかり先頭になって歩き出した。
茶店のお姉さんに湖一周は約6Kmあり山道もあるから2時間ほどかかるでしょうと聞いていた、山々は春の雪で化粧しており、その道を歩いている人は無く、その景色は我々の独占となった。
途中でどうせ引き返すであろうと思っていた黒犬はどういうわけか最後まで皆を先導してくれたのである。

不思議なことに湖面にそった景色のよい見所にくると、黒犬は待っていてあたかも此処を観ていけと言っているような仕草を何度となく繰り返した、我々はすっかり嬉しくなりゴール地点で弁当をこの黒犬と一緒にとった、まるで仲間のように。