動的平衡

090830胡麻

動的平衡

このところ面白い本にはまっている、分子生物学者 福岡伸一さんの書くものだ。時代の最先端をゆく分野であるから専門的に書かれたらとても理解出来ず2−3ページ読まないうちに放り出すに違いない、ところがこの先生まだ若いのに専門的分野の話を素人にも実に判りやすく解き明かしてくれ厭きさせない、その筆力たるや並の小説家を上回る。

そのうえ書いていることがフィクションでなく、科学的に現在証明されていることだから小説家も真っ青だ、ただしこれは私の感想。とりあげる話題も生物の生命活動そのものであり、その根源にまでさかのぼる。また関連した分野で海外の優れた学者の著作物の翻訳など活動は幅広い。

「生命とは動的平衡にある流れである」と福岡さんは言う、最初何を言わんとするかさっぱり判らなかった、何冊か彼の本を読むうちにおぼろげながら見当がつくようになった。また「人間という生物は生き残るために先回りして遺伝子を子孫に残し、エントロピーの法則によって個体は死ぬが人間としては連綿として地球上に生き続けている」というのである。それ以来、生命に対する私の考えがすっきりとした。

この問題に興味があれば私がくだくだ話すよりも実物を読んでもらいたい。
福岡伸一
生物と無生物のあいだ」 講談社現代新書
動的平衡」木楽社
「生命と食」岩波ブックレット
他多数。

別にこの先生の本を薦める義理はないが、良い本を読むと人に薦めたくなる。