(今どき 健康学)百寿者、たんぱく質多く摂取

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Fujio Saito
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(今どき 健康学)百寿者、たんぱく質多く摂取
2011/5/22付 日本経済新聞 朝刊 944文字
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 日本には100歳以上の高齢者はどれくらいいるのだろうか。厚生労働省の統計によると、2010年には4万4449人である。およそ20年前の1989年が3078人であったから20年ほどで15倍弱になったことになる。日本人は他国の人に比べて健康寿命も長いといわれるから、健康な100歳長寿者が増えることは喜ばしいことだ。



イラスト・中村 久美
 100歳以上の人(百寿者ともいう)が多くなったのは、栄養状態の改善の効果が大きい。人間総合科学大学保健医療学部長の柴田博教授は「高齢者の栄養状態が悪い(低栄養)と免疫力が下がり、骨なども弱くなって感染症にかかりやすくなったり、骨折も起こしやすくなる。いろいろなことから高齢者の低栄養は老化を進める要因になる」と言う。栄養の中でも、特にたんぱく質の摂取が増えたことが大きくきいている。

 柴田さんがいた東京都老人総合研究所が行った有名な研究がある。それは「百寿者は摂取総カロリーの内でたんぱく質から得るカロリーの割合が日本人の平均よりも高い。しかも、肉などの動物性たんぱく質も多い」というものだ。長生きする人の食事は低エネルギーだが高たんぱく質だった。それまでは「健康のためには粗食を」とか「高齢になると野菜中心のあっさりした食事がよい」といわれてきたが、その常識を打ち破るもの。これはその後の調査でも補強されている。

 老化を遅らせ、介護の必要がない生活をおくるには、筋力をつけるのが一番。それには筋肉のもとになるたんぱく質を摂ることが最もよい。加えて運動も必要だ。いくらたんぱく質を摂っても運動をしなくては筋肉がつかないし、骨も強くならない。寝たきりの高齢者は筋肉が弱くなり体を支えきれなくなる。

 ただ、特定の食品成分、栄養がよいといってその食品ばかりを食べてはいけない。必要なのは「偏りのない食事のバランス、食生活の多様化」である。食品をバランスよく摂っている人ほど生活機能の低下も少ない。いろんな食品をまんべんなく摂ることが大切だ。

 最後に柴田さんがまとめた「高齢者でもこれだけ摂りたい一日の栄養」をあげておこう。肉60〜80グラム、魚介類80〜100グラム、豆腐3分の1丁(または納豆1食)、卵1個、野菜350グラム、海草類15グラムなど。

江戸川大学教授 中村雅美)