旅をすると自分が何も知らないことに気づく。
たとえばアイルランドの宗教はキリスト教でも、宗派はほとんどはカトリックであることはうすうす知っていた程度。
この国へ初めてキリスト教を持ち込んだのは、後にこの国の守護聖人となる聖パトリック(AC385?-461?)であり、それ以前この国には土着のドルイト教があった。
このケルト系の土着の宗教は多神教であり、死んでも霊魂は不滅で、それは人間、動物、昆虫などの間を自由に「転生」することができた。なぜか日本人は近親間を覚える。
もともとケルト系であったパトリック先生?はキリスト教を広めるにあたって、一部このドルイト教と「習合」させてキリスト教を広めた。ちょうど日本で渡来の仏教が日本古来の神々と「習合」したことに近い。
キリスト教が拡大するにつれてドルイト教の神々は姿を隠し、いまではケルトの民話のなかに妖精たちとなって残っている。
またアイルランドのカトリック教が独特であることは、その十字架の形を見ても判る、いわゆるケルト十字架だ。
ダブリンのパトリック大聖堂で、パトリック先生が実際に洗礼のために使っていた井戸の蓋に刻まれたその十字架を目の前にしたときは、ここを訪ねて良かったと思った。