たまご屋爺さんの独り言 黒四ダムへの旅

たまご屋爺さんの独り言 黒四ダムへの旅

 ちょっと寂しい話だが老妻と旅にでる時、あるいはこれが最後のチャンスになるやも知れぬとの思いがする。

私は脳梗塞を抱えているし、耳が最近とくに不自由である。

カミさんはといえば、口は達者であるが脚がめっきり弱くなり、杖を必要とする。

二人合わせても一人前にはならぬが、組めばなんとか旅に出られる。

旅仲間の先輩夫妻たちから声がかかった。

仲間は85才を筆頭に皆80才を超えているので、私達がいちばんの若造。

先輩たちは誰でもそれなりの病気をかかえ、またそれを乗り越えて現在がある。

共通しているのは、いずれも旺盛な好奇心と食欲。

二泊三日の行程で長野県側からアルペンルートをバスで横断、ケーブルカーにて黒四ダム、室堂を経て彌陀ヶ原に一泊。

二日目、立山を経て宇奈月に出る、黒四ダムへ膨大な建設資材を運んだトロッコ電車に乗り、この日は白馬八方温泉に泊る。

最終日、姫川源流を経て上高地へ、合羽橋たもとの五千ホテルで800円のコーヒー、美味い。

起点の新宿駅に戻る。

驚くべきことに、旅中一番元気が良かったのは85才の先輩であった。