ネギ名人

むしむしとした梅雨の合間、急いで鶏舎の周りの草刈りに精を出す。
この時期は雑草の生命力も一番強く、まごまごしているとたちまちこちらが根負けしてしまう。
たとえ雑草であっても小まめに草刈りをしてやればゴルフ場までとは言わないが綺麗になる。
ありがたい事にエンジンつきの移動式草刈機もある、いままでは手作業で重労働であった。

夏の草刈作業は先手必勝である、早め早めに手を打って行くのがコツである。
早めに草を刈っていけば、機械の負担も少ないし、はかどるしので気持ちが良い。
そうは判っていてもつい後手に回ることが多い、そうなると草の背丈は伸びるし、強靭にはなるしたとえ機械であっても手間がかかるし、そしてちっともはかどらない。

まわりの農家では今ネギの手入れで大忙しである、名人級の農家になるといつ草を取ったのかと思われるほど畑に雑草はなくいつも綺麗である、まさに「上農は草の出る前に草を取り、中農は草を見てからこれを取り、下農はこれを取らない」はそのとうりである。
隣のKさん夫婦はネギ名人である、とにかくKさんの作るネギは他の人たちのそれとは違うのである。
市場でいつも高い値段がつく。
その道その道でプロがいるもので、一年間の作業の積み重ねがその違いを生み出していくのであろう。

Kさん夫婦だけが特別働き者というわけではない、それとなく二人の働きぶりを観察していると名人ぶりがそれとなくわかる。
仕事のタイミングをはずさない事と、段取りの良さは抜群である、理屈では誰にでもわかっていることだがそれが誰にでも実行できないのは、名人の名人たる由縁である。
結果は同じネギを作っているのだが、名人の畑には草一本生えていないのに、他の畑では雑草に追われるほどの違いがでてくる。
おそらく総合的な作業量から言えば名人のほうが少ないであろう。
こちらは名人の仕事っぷりを片目に鶏舎のまわりの草刈に追われる毎日である。