天敵

天敵

梅雨から夏にかけて、採卵養鶏をやっている者たちにとっては魔の季節である。
特にこの季節、ハエの発生とか悪臭の問題とか頭が痛い、これがなければ本当に良い仕事なのだがとこぼす同業者も多い。
これらの対策に業界も色々と知恵をしぼってきた。

ハエについて云えばその発生源を叩けば良いことは分かっている、このためお金はかかるが定期的に化学的殺虫剤を撒くのも一つの方法である。
ただしこの方法は途中で止めることが出来ない、なぜなら途中で止めるとかえってハエの大爆発を起こしてしまい手に負えない状態になってしまう。
自然の摂理は凄いもので、自然にほっておけばハエでもある程度以上には増えない、それが我慢出来なくて皆殺ししようと化学的殺虫剤を頻繁に散布するとせっかく発生してきた天敵の昆虫まで殺してしまう。
そこで散布を止めると天敵が居ないためハエの大爆発となるらしい。

それならばハエの天敵となる昆虫を見つけ出し、これらが繁殖しやすい環境を鶏舎の中に整えることだ。
自然発生する天敵でハエをコントロール出来れば危険な農薬を使うこともないしお金はかからないし一石二鳥である。
さらにこの天敵の昆虫はハエの蛆を求めて鶏糞の中を動き回るので鶏糞が乾燥してきた、そうなれば悪臭も少なくなる。
まさに一石三鳥であった。

とここまでは良いことづくめの天敵さまさまであったが、ひとつ問題が発生した。
気温の関係か鶏舎内で大人しくしていた天敵の昆虫が気温の上昇とともに活発になり舎内だけに留まらず、舎外にまで活動の範囲を拡げてきた。
近くに人家もありこれの侵入に頭を痛めることになった、あるいは天敵の天敵が必要となるかもしれないが、まだそれは見つかってない。
まことに自然界のバランスは人智を超えるものである。