無言館

U先輩より、東京駅のステーションギャラリーで「戦後60年 無言館 遺された絵画展」が開催されているとの案内をいただいた。メール の最後に「本館ともども、御一見をお勧め、いや、お願いする」とあった。なにはともあれ東京駅へ出かけていった。ご存知のごとく、無言館は長野県上田市の郊外にあり、戦没画学生の遺作を収集展示している。

あわてて出かけたため、老眼鏡を忘れせっかくの記録の文字を読み取ることは出来なかったが、絵は幸いちょっと離れて観ればなんとかなった。東京駅のステーションギャラリーとあって、平日にもかかわらず大勢の人たちで会場は賑わっていた。会場は私を含めて圧倒的に年配の人たちが多かった。無言館で観たときもそうであったが、これらの絵をまえにして私はただ茫然として立ち尽くすほかなす術がなかった。

絵の巧拙は私にはわからないが、そんなことはともかく出征を前にして残り少ない時間のなか、それでもなお絵が書きたかったという画学生の気持ちを思うとたまらない。絵を観る年配の人たちは黙りこくって、眼をしょぼつかせていた。

気持ちが萎えたときには力を与え、有頂天に舞い上がっているときにはこれを鎮める力を、これらの絵はもっている。こんどは慌てずに老眼鏡を持って行かねばならない。