頭の体操 その一

頭の体操 その一

6月の船旅で一緒になった79歳のH氏はたいへんな読書家である、それも限られた専門分野にかぎらず興味は広い範囲にわたっている、十日間の旅行中話は尽きることがなかった。

その時、話がたまたま宗教の話題になった、私がキリスト教と仏教のことに興味をもっていることが分かると自分の読まれた本のうち面白かったものを紹介してくれた。

(1)「聖書の大地」 加賀乙彦、(2)「仏陀のことば」 増谷文雄、(3)「仏教とキリスト教の比較研究」 増谷文雄 がそれである。

旅から戻って早速その本を探してみたが、いずれも古い本なので中古本を当たり手に入れた。

加賀乙彦の名前は知っていたが著書は読んだことが無く、恥ずかしながら増谷文雄は初めて聞く名前だ、有名な仏教学者であり仏教者であることが後で分かった。

8月9日に一緒に旅した3組の老夫婦がH夫妻の八ヶ岳山荘で会うことになっていたので、これらの本を夢中になって読んだ、暑いにもかかわらず珍しく集中して読めた。

特に「仏教とキリスト教の比較研究」は40年以上前に書かれたものだが興味深いものがあった、両宗教のあらゆる文献に目を通し、その特徴、相違点、共通点、成り立ち、拡がり、などをどちらが優れているか劣っているかの観点でなく、ありのままに分析していることに好感がもてた。

静かな山荘で夜の更けるまで話に花が咲いたのはいうまでも無い。