宿のオヤジさん91歳は酒好きだ。
朝昼晩とメシのとき酒一合づつ、毎日三合を何十年と欠かさない。
私をふくめ歩き仲間は、どちらかといえば下戸である。
薦められた酒を「もう結構です」と断ると、世にも悲しそうな顔をする。
これだけ酒を飲んで現役で仕事が出来るのにはわけがある。
民宿は木造二階建てで、客は二階に泊まる。
オヤジさんは寝具の用意片付けなどで、急な階段を日に何度も上下する。一階ではまたおカミさんの作った料理の配膳などで忙しい。
89歳のおカミさんも、料理会計その他で身体も脳みそもフル回転。
食べる物もとても研究している、毎食一合づつ飲むが必ず毎食納豆と自家製の梅干、あと満遍なくなんでも食べる。そしてこれもまた自家製の粉茶を淹れた濃いお茶を欠かさない。
一日の疲れは、自家用に引いてある草津の源泉につかってとり、ゆっくり休む。
好きな仕事をして長生きできればこんな結構なことはない。