秩父歩き遍路 その一

思い立って、この週の初めに秩父歩き遍路にでかけた。
秩父34ヶ所の古寺を8回に分けて歩き続ける予定なのだが、計画は良いのだが歩き通せるかどうかわからない。
歩く相棒は同年輩のKさんで、私より余程脚が達者である、彼は昨年奥さんを亡くされた。

秩父鉄道桜沢駅から朝一番の電車で秩父駅に向かった、乗客は私たちを除けば数人でなにか申し訳ない。
バスに乗り継ぎ一番札所である四万部寺に着いたのは朝8時も大分前であった。
境内で握り飯をほお張り、納経所の開くのを待った。
近所の人たちが入れ替わり朝のお参りに来ていた、やがて納経所も始まり、巡礼に必要な納経帳、菅笠、巡礼鈴、を手に入れた。
この時間,山道を歩く人はほとんどいない、曇っていた空も怪しくなり雨がぽつぽつ降ってきた、遠くで雷の音が聞こえる。

訪ねたお寺では、Kさんが亡くなった奥さんの短歌集「木もれ陽」のなかから好きな歌を半紙に書き取り、それを読み上げ納経の代わりに寺に納めた。
私は「般若心経」をたどたどしく棒読みにした。
お互いに最初のうちは、なかなか声がでなかったが,五番札所語歌堂にたどり着いた時には、かなり声が出るようになっていた。

秩父の天気は変わりやすく、晴れていても急に雨が降ってきたりする、うっかり傘を忘れ途方に暮れていると、お寺さんがそれを貸してくれたり、菅笠をかぶってとぼとぼ歩いていると多くの人に挨拶されるなど歩き遍路ならではの体験もさせてもらった。
雨と雷にたたられた一日であったが、なぜか充実した一日であった。
帰りの電車のなかでもう次の計画を立てていた。