秩父歩き遍路 その七

今日はとんだヘマをやらかした、一日でニケ所、31番観音院と33番菊水寺を回れば良いので気がすこし緩んでいたに違いない、観音院の巨大な石の仁王様をあとにした頃には生憎小雨が降りはじめた、がんばって小鹿野のバス車庫まで歩いたがついにダウン、ここから泉田までバスに乗った。
バスを降りたのは私と相棒そして一人の女性遍路者だった、年のころは五十代のはじめか、なにか訳ありの様子で話しかけてもあまり喋らない、彼女は雨のなかをすたすたと歩きはじめた、脚は恐ろしく早い、遅れないように我々は一層懸命ついていった。

男は甘い、彼女がてっきり我々の目指す33番菊水寺へ行くのだと思い込んでいた、彼女は突如32番法性寺への看板にしたがって曲がっていった、そこは前回我々が山越えで訪ねた所だ、気づいた時には雨のなかを大分遠くに来ている。
「女で道を間違えた」相棒と二人で大笑いした。

しょぼしょぼと小雨の中、振り出しにもどり菊水寺まで歩き納経をすませた、お堂の中は土間になっていてここで参拝をすませる、相棒のKさんの唄う奥さんの短歌は朗々としてきて堂内に響く、私の唱える般若心経も大分つっかえなくなった。

お昼に食べた観音茶屋の「鬼ころり」は、山芋と蕎麦粉を練り合わせ天ぷらにしたものだが、蕎麦とセットになっていて、ここの名物料理になっている、すこしカロリーオーバーだが腹が減っては歩けない。
帰りに楽しみにしている鉱泉も近くになく、ヘマをやったお陰で今日は時間切れとなり、そのまま帰りの秩父鉄道に乗り込んだ。