ハイブング村寺子屋 もてなし

寺子屋開校式のあと、せっかく遠い日本からおいで下さったのだから是非とも昼食を食べていってくれということになった。
この村に料理屋があるわけでなし、その材料を仕入れるのにも半日以上かかるであろうと我々は心配した、ところが心配無用、すぐ近くの農家の軒先がその会場となった。

一昔前の日本の農家の婚礼のように近所の人たちが集まり、会場となった家の台所で料理は作られていた、出来上がるまで時間があるので家の中を見ていけという、遠慮なくあとに続いていくと、木造藁葺き屋根のこの家は一階が台所を中心とした土間、二階が寝床を中心とした居間、低い三階は倉庫になっていた、丁度一階で薪を燃やし煮炊きしている煙が部屋中を燻して三階の両隅から抜けていく、日本の藁葺き屋根の家と同じでこの煙が防腐剤の仕事をしているのだが、われわれには煙くてたまらない。

食事が出来たので土間に敷かれた筵にあぐらをかくと、眼のまえに皿に入った押し麦のようなものが出てきた、われわれはどう食べてよいのやら思案にくれていると、そのまま口にほうり込めば良いという、やがてメインディッシュが出てきた、といっても大皿一枚、これにパサパサしたご飯が山とつがれる、これにかける香辛料の強いスープが添えられていた、このスープには少しの鶏肉らしきものが入っている、われわれのために貴重な鶏が捻られたに違いない。

ネパール全体では米は自給できず隣のインドから輸入している、白米をたらふく食べそれに鶏を食べることはこの村では最高の贅沢に違いない。
同行したさいたまユネスコの橋本嬢にならって、右手五本指を使いご飯にスープをかけこねて口に放り込むがなかなか上手くいかない、大勢の村人監視のなかなので尚更だ。
料理はお世辞にも美味いとは云えないが、遠来の客を出来るだけのことをしてもてなそうとする気持ちは十分伝わってくる。