ホトトギスが鳴く

初夏を思わせるどんよりした午後、草刈に汗を流していると突如眼の前の木でホトトギスが鳴きだした。
声をたよりにその姿を追ったが濃い緑に遮られてその姿を見ることは出来なかった。
ならば手を休めてじっくりとその声を聴くこととした、ホトトギスはその習性から一箇所でひと鳴きすると場所を変えてまた鳴く。
案の定ここでひと鳴きした後一直線に鳴きながら西の方向へ飛んでいった。

毎年初夏ホトトギスは私の住んでいる櫛挽ヶ原にやってくる。
約400ヘクタールある開拓地の防風林を縦横無尽に飛び回ってそのけたたましい声を残していく。
毎年同じホトトギスが櫛挽ヶ原にやって来るのか知るよしもないが、まるで自分の縄張りであるかのように振舞う。

五年前のホトトギスが鳴く頃、私は脳卒中に倒れた。
それ以来毎年ホトトギスの鳴き声をきくと正直「ほっと」する、お陰さまでこの一年間生かされてきたとの想いが強い。
病気をすることは辛いことだが、病気をして始めてわかることもある。

草刈を終え道具を片付けていると、まだ遠くのほうでホトトギスが鳴いていた。