左手だけのピアノ弾き

 10/19の夕刊を見ていたらピアニスト館野泉のことがかなり大きなスペースで出ていた。
私はそれまで彼が何者であるかぜんぜん知らなかったが、記事によれば彼は私と同じ70歳であり、5年前脳卒中で右半身不随になり演奏活動を断念したこと、2年後左手だけのピアノ演奏者としてステージに復帰したことなどが書いてあった。
なにか私の場合と似かよっている、ただし病気の部分だけ。

興味を持ってよく読んでみると彼は東京芸術大学を主席で卒業、以後活動の場をフィンランドヘルシンキに移し,ヨーロッパと日本で精力的な演奏活動をしていた人で、その世界では名を知られているらしい。
今回日本でのコンサートツヮープログラムを見てみると、なんと近くの鴻巣市で10/21行われるという、こうなるとじっといていられない。
早速席の空いているのを確かめた。

当日、1000人以上入る会場はほぼ満席であった、少し不自由であるがしっかりした足取りで現れた彼は左手ひとつでピアノを弾き続けた、
今ここでピアノが弾けることが彼にとって嬉しくて嬉しくてしようがないことが会場に伝わってきた。
曲目は仲間の作曲家が彼のために捧げたものを中心に、クラシックからジャズまであった。

彼のメッセージ、「身体が不自由になって生きる喜びが分かるようになったというのは逆説のようですが,私はその喜びをいま、ひしひしと感じております」とあったが、私には分かるような気がする。
演奏が終わってから、会場の全員が彼の復帰と誕生日を祝ってハッピィバースデイを歌ったとき、なぜかジーンときてしまった。