たまご屋おやじの近所付き合い 下着泥棒

今年は地元老人会の旅行で塩原温泉に出かけた。
会の代表世話役はお役御免となったが、顧問という名前をつけられ雑用を引き受けている。
業界などの会合ではすでに長老になってしまったが、ここでは若手になるので何かと気を使う。
旅行の予算は二泊三日で交通費こみの一人あたり13,000円なり、何処からの補助も受けない。
これで良くやっていけると思うが、昨年も経験したとおり老人会ビジネスはいまや花盛りなのである。

私たちの利用したホテルは塩原温泉だけで五つの大きなホテルを持ち、お客を老人会に絞っている。
経営を徹底的に合理化してそのトータルコストを下げている、それが人気の秘密のようだ。
観光地ホテルは何処も週末は忙しいがあとは閑散としている、ところが老人会相手は週末に関係がないので稼働率が断然違う。
稼働率が良ければ、他のすべてのコストが下がる、こんなことは素人でもわかる。

そんなことを考えながらのんびりお湯につかり出てみると、どうした訳か私の脱いだところに下着も浴衣も何もない。
一瞬場所を間違えたのかと思い確認しなおした。
いま風呂に入っている人数が三人であるから、私の分をいれて下着は四つなければならない、ところがこれが三つしかない。
思い出して見ると、浴衣の袖に数千円と小銭を入れておいた、爺さんの下着に興味を持つやつなど考えられないから敵はどうもこれを狙ったらしい。
裸でホテルのフロントまで知らせに行くわけにもいかず思案にくれていると、新しい入浴客が来たので事情を話しホテルの人に浴衣を持ってきてもらった。
浴衣一枚で部屋に帰ったが下のほうがスースーしていた。

この話を夕食時皆さんに紹介したら、宴会はすっかり盛り上がってしまった。
合理化は結構なことだが、肝心な安全はもっと大事なことである。