かくれキリシタン

付き合いのあるWさん夫妻の紹介で東京四ッ谷の聖イグナチォ教会の隣にあるイエズス会聖三木図書館を訪ねた。
ここは会員制のこじんまりとした図書館で蔵書はおよそ3万冊といわれる、特にキリスト教関係の蔵書がすぐれていて、平日は土曜日にいたるまで夜8時まで開館しているのも嬉しい。
訪ねたのは土曜日の午後であったが、10名前後の閲覧者がいるだけで、だれもが資料の調査に夢中で取り組んで様子、咳払いするのも憚られた。

Wさん夫妻と雑談のとき日本の「かくれキリシタン」について話したことがある、この事について私は単に野次馬根性で浅い知識しか持ち合わせなかったのでもっと知りたいと思っていた、それならばこの図書館に行ってみてはと夫妻に薦められたのがここに来るきっかけとなった。
なるほど、書架には今まで見たこともないようなタイトルの本がずらりと並び、眼もくらむほどであった、本好きを自称する私がこの分野の本はほとんど読んでおらず、自分がいかに狭い分野に閉じこもっていたかを思い知らされた。

ちょうど今、日本経済新聞の「私の履歴書」で民族学谷川健一氏の連載があり「かくれキリシタン」の記事があった、そこには感動的な日本的聖書のことが書いてあった、なんでも長崎県に江戸時代より云い伝えられた「天地始之事」は日本の風土から生まれた独創的な聖書であるという、図書館のスタッフにこの本のことについて尋ねたが残念ながら見つけることが出来なかったが、書架をじっくり見てゆくとそこには「関東平野隠れキリシタン」というぶ厚い調査資料があった、急いで机に持ち帰り調べてみると、現在私の住む深谷市やとなりの本庄市にある寺の墓に数多くの「かくれキリシタン」の印が読み取れると資料には詳細に記されていた。

それらを夢中になって読んでいると何時の間にか閉館の時間になっており続きはまたの機会となった、久しぶりに本を読む醍醐味を味わった半日であり、嬉しくなって図書館に併設されている売店で「深い河」遠藤周作と、「ザビエルの見た日本」ピーター・ミルワードを買って帰った。