バクタプル(Bhaktapur)の静寂

カトマンズーの街中から車で約30分、そこは嘘のように静かな街であった、車もあまり入ってこないし人も多くない、とくにカトマンズーの街中からやってくると尚更そう感じる。
ここは15世紀ー18世紀にかけて栄えた王朝の首都であったという、この国の中世の面影をもっとも残しているといわれている。

光都市には違いないが街なかでは市民の落ち着いた生活が見られる、街の広場では丁度穫り入れられた小麦の束が干され、脚こぎの脱穀機がガーコンガーコンと音をたて、さらに風の力を利用して小麦とその殻とを分けていた、この風景は私が子供のころ近所の農家で見たものに近い、すごく親しみを感じ懐かしい気持ちになった。

この街は特に信仰心が強いように感じる、街の中心部にはニャタポラ寺院の五重の塔がそびえ、その周りにも巨大な寺院がとりかこみ独特な雰囲気を保っている、はじめての旅行者にはそれがヒンズー教の寺院なのか仏教のそれなのか区別がつかない、この両宗教は相性が良いらしくこの国では宗教戦争はしてないという。
日本でいえばお寺さんの隣に神社があり、善男善女がなんの不思議もなく自然に両方お参りしているが、ここでも自然に両方お参りしているようだ。

だが日本人にとってこのヒンズー教の神々はグロテスクで恐ろしい姿をしている、寺院のみならず街のいたる所にその祠(ほこら)があり、朝な夕なお参りする人たちが途切れない。
特にシバアリンガ信仰(男根信仰)には恐れ入る、これも街のいたるところにあり、別に男根をリアルに彫った石像ではなく只の石の場合が多いのだが、これを妙齢の婦人が撫ぜて赤いテイカをなすりつけていく姿には驚かされる、まことに処変われば品変わるである。