「だれが中国を養うのか」

「だれが中国を養うのか」

今から 15年ほど前に読んだ「だれが中国を養うのか」(WHO WILL FEED CHINA?レスター・ブラウン1995) をまた読み返している、正直云って当初の印象では「なにをそんなに大げさに騒いでいるのだろう」くらいの感覚であった。
戦後の混乱から立ち直り経済的に成長してきた日本、韓国、台湾を例にして経済的に余裕が出てくればその国の伝統的な食生活が西欧型の肉、卵、乳製品を多く摂るパターンに変わり、そのために三国は飼料穀物を大量に輸入するようになった、このことがこれから中国でも起きると予測し、15年前に日本、韓国、台湾が輸入していた穀物を同じ割合で中国が買いたくてもそれを供給できる国は世界中にないという論旨のものであった。
当時この報告は大きな論議を呼び、当の中国はすぐ「中国人の食糧は将来とも中国国内で賄える」と反論したのを覚えている、ところが予想を上回る中国の経済的な成長とともに予測は現実のものとなりつつある。
2009 年中国が輸入した大豆は4255万トンであった、その年中国国内で生産された大豆は1600万トンと推定されるので大豆の自給率は既に3割程度である、10年前の1999年には輸入量が十分の一の432万トンであったことを思えば食の世界で如何に大きな変化が隣の国で起きているかが分かる。世界最大の大豆生産国および輸出国であるアメリカにとって今や中国は最大のお得意さんになっている、このことはまだほんの序の口で本命はトウモロコシである、今まで中国はトウモロコシを輸出してきた、ところが最近増加する需要に間に合わず一部輸入することを始めた。
大豆は人間用に搾油した後残る粕は大事な家畜の蛋白源となる、トウモロコシは家畜にとって大事なカロり−源でありその必要量は大豆の3倍以上になる、つまりそれだけのトウモロコシをめぐって世界的な争奪戦が始まることになる。
中国は国土も大きいが人口も膨大である、人口一人当たりの耕地面積はほぼ日本と同じであるので、家畜用の穀物を生産する耕地の余力は無い、それを満たすには日本同様海外にそれを頼らざるを得ない、ところが海外にもそれを賄う土地はすでに無いのである。レスター・ブラウンが15年前に云っていたことが現実になりつつある。