2.アンコール・ワットとアンコール・トム

2.アンコール・ワットとアンコール・トム

なんといってもアンコール遺跡の目玉はワットとトムである。
150年ほど前までこのカンボジアを代表する遺跡は世界にほとんど知られていなかった。
ワットの創建時代は12世紀初頭、トムのそれは12世紀末とされ、両者は距離で2kmと離れていない。12世紀に最盛期を迎えたクメール王朝は、その500年間このSiem Reap地域にて継続した、それはこの地域が経済的にも政治的にも大事な場所であったから。
王朝が歴史の舞台から消え、その絢爛たる建造物も密林のなかに放置された。以来500年以上自然の猛威にさらされたため、石およびレンガ造りの建物の多くは崩壊した、そこで150年前フランスの博物学者に再発見され注目をあびるようになった。
熱帯雨林の中に忽然とそびえるワットの威容には誰もが驚く、およそ千年も昔に誰が何のためにこんなもの造ったのであろう?誰もがいだく疑問だ。そして当時このような高度な文明、文化をもった民族はどこへ行ってしまったのであろうか?
現在、私たちが眼にする両遺跡は再発見いらい修復作業が続けられてきた、現在でもフランス、日本が中心となってその作業が進んでいる。
ワットはヒンズー教の神殿であり、その宇宙観および思想のもとに建設されている、またトムは仏教寺院であり、その考え方のもとに造られている。これらを建設した王様は違うし、年代も異なるが仲良く共存しているように見える。
ところが実際はもっと激しいもので、遺跡によっては仏教寺院であったものをヒンズー神殿に変えるために仏像を破壊破棄してヒンズーの神々に置き換えたりしている、日本の上智大学の調査チームがその破棄された仏像群を発見して話題になったことがある。
まことに宗教間の争いは根が深い。