たまご屋おやじの独り言 2002年7月

たまご屋おやじの独り言 2002年7月

19/July/02

イタリアのトリインフルエンザ(LPAI)と家禽ペスト(HPAI) (4)AIワクチン

前回LPAIがHPAIに変異して1400万羽以上の家禽類がなすすべもなく死ぬか殺処分された事を述べた。総額550億円以上もの被害を受けてイタリアは何を学んだのであろうか?

2000年8月及び12月、殺菌消毒された同地区に再導入された七面鳥、鶏にLPAIが再発した。政府はHPAIへの変異を恐れてこれを殺処分、全額補償した。政府は殺処分,殲滅作戦でもこれを防御出来ぬ事を理解し、業界の強い要望もあってAIワクチンの使用に踏み切った。ただしこのワクチンは公的機関の強い監視のもとに地域を厳しく限定して行われた。更にこのワクチンは接種によって得られる抗体と野外の感染によるそれと区別出来るものであった(DIVAワクチン)。1500万羽にAIワクチンが接種され、衛生対策が強化されたこととあいまってさしものLPAIもHPAIも以来発生していない。徹底した衛生管理、殺処分による隔離、ワクチンの使用の組み合わせがこの病気防御の現実的な方法であるとDr,Capuaは結論づけている。この結論を学ぶのにイタリアは550億円支払った。

19/July/02

イタリアのトリインフルエンザ(LPAI)と家禽ペスト(HPAI) (3)被害の実態

イタリアの家禽産業の大壊滅はどのように起きたのであろう?それは温存されていた弱毒ウィルス(LPAI)が秋から冬にかけて強毒ウィルス(HPAI)に突如変異したからと Dr,Capuaは言う。ウィルスの変異については専門の人に任せるとして、LPAIは農場段階では経済的被害もあまり多くなく見過ごされやすい。これはイタリアでも日本でも同じことだと思います。それゆえLPAIは何時の間にか感染が拡大してしまいます。HPAIの場合は感染があった場合48時間以内に100%死亡しますから緊急の対策はむしろ立てやすいのかも知れません。

後になって言えることですが、イタリアはLPAIを放置した為これが火種となって残り、変異し大壊滅にいたったようです。

199912/7−20004/5 イタリアのHPAIによる被害羽数(殺処分を含む)
            農場数       羽数
採卵鶏         121      8,118,929
七面鳥 肉用     177      2,692,917
ブロイラー        39      1,625,628
その他家禽       76      1,295,434
計            413     13,732,912
 
これは公式に政府が発表した被害羽数である、実情はこれを大きく上回るものと推測される。

HPAIはイタリア北部のVeneto,Lombardia地区に集中的に被害をもたらした。この地域はイタリアの家禽産業の65%を担う密集地帯である。
 
日本の状況と異なることは、採卵鶏、ブロイラーが密集しているだけでなく、七面鳥及びその他の家禽類(ギニヤ鳥、ダチョウ,アヒル,キジ、鶉など)が混在していることだ。又関連した孵化場、食鶏処理場があり車両及び人の動きを複雑にしている。
 
日本の場合に置き換えてみれば、関東地方では鹿島の飼料工場を中心に車両によるウィルスの伝播が考えられる。それもLPAIの場合知らぬ間に感染が拡大する事が想定される。

17/July/02

イタリアのトリインフルエンザ(LPAI)と家禽ペスト(HPAI) (2)LPAIとHPAI

先日埼玉県で行われた「AIセミナー」の鴻巣先生によれば、日本の家畜伝染病予防法に家禽のインフルエンザは
1:トリインフルエンザ(LPAI) 届出伝染病(発生の届け出が必要) 
2:家禽ペスト(HPAI) 法定伝染病(殺処分の対象)
に分かれてます。この二つは法的措置はまるで違います。 

国際的には1:がLPAI(弱毒トリインフルエンザ)、2:がHPAI(強毒トリインフルエンザ)になりますので以後これを用います。

1997年イタリアでは小規模のHPAIの発生があった。主に小規模の平飼い養鶏が中心で48時間以内に100%死亡した。

1999年5月Veneto,Lombardia地区に七面鳥、ブロイラー、採卵鶏にLPAIの発生がみられた。正式にそれと確認された時には発生農場数は50戸を超えていた。この段階では採卵養鶏では死亡を伴わず、軽度の産卵減(5−10%)のみでその後回復した。衛生対策その他リスク管理を強化したためと、夏季になったため(AIウィルスは熱に弱い)この時点での発生戸数は7戸に減少していた。多分一件落着と関係者は胸を撫で下ろしたに違いない。この時点で誰も後にくる事の重大性に気が付いた人は多くない。

ちなみにEU規則でHPAIはO,I,E Aリスト(口蹄疫なみ)に入るが、LPAIは入らないので殺処分、補償の対象にはならない。後の祭りではあるが、この時点でこの7戸のLPAI発生農場を強制殺処分しておけば、大壊滅を防げたとDr,Capuaは云っている。

17/July/02

イタリアのトリインフルエンザ(LPAI)と家禽ペスト(HPAI) (1)大混乱

1999年から2000年にかけてイタリアで発生したトリインフルエンザ(LPAI)と家禽ペスト(HPAI)はイタリアの家禽業界を大混乱に陥れた。

イタリアは人口で日本の半分弱の5700万人、採卵鶏の数は年間初生ヒナから推定すると5000万羽前後であろう。その国がAIの発生によって1000万羽つまり約2割を半年の間に失ってしまった。これは日本におき直すと約3000万羽(関東地方の採卵鶏羽数に相当)が急にいなくなってしまったことになる、業界は大混乱に陥った。
 
イタリアではこれによる経済的被害は5億ユーロ(550億円)に達し、そのうち補償費だけで1億ユーロ(110億円)政府から支払われた。イタリアには申し訳ないが、その発生から防圧にいたるまでの経過を官民ともに日本は勉強させてもらい、その日に備えたいと思う。

幸いにして資料には事欠かない。
1:書籍 「Avian Influenza」 Dr.I.Capua イタリア国立家禽研究所部長
2:ビデオ 「Avian Influenza」 Dr.I.Capua 東京シンポジウムの講演記録

著者のCapua女史は「官」の立場にたつ人である。AI発生当初徹底した殺処分と移動禁止でこれをコントロール可能として、ワクチンの使用には反対であったが、結果は両者の併用ではじめてAIの防御可能であるとした。日本でもワクチン使用の可否について議論があると思う。その際イタリアの事例は多いに参考になる。

いろいろな立場からこの資料を読み解くことが必要であるが、一生産者の立場で要点のみ取り上げて見よう。

尚、この資料はNBI(http://www.nbi.ne.jp/ourcompany.html)で入手可能。

13/July/02

ブラジル養鶏事情

先日、鶏鳴新聞岡社長と共通の友人であるブラジルのドクトールYAMAGUCHIからMailが入った。1978年リオデジャネロで開催された万国家禽会議以来の友人である。

YAMAGUCHI さんはブラジルの日系養鶏家からドクトールと呼ばれ信頼されている。ポルトガル語スペイン語、英語、日本語は勿論のこと70歳を超える今でもブラジルの奥地を飛んで回っておられる。その彼にお願いしてniwatoriの仲間になっていただき、時々「ブラジル養鶏事情」を送ってもらうことにした。以下は私宛の私信ですが断って載せさせてもらいました。

… … …
                
『永らく御無沙汰致して居ります。其の後も相変らず元気で活躍くされて居る事と推察いたします。鶏鳴の岡さんから貴兄のE-mailを教えて貰いました。小生も早七十を超えましたが、現在も変わらずグループと共にやって居ります。

ブラジルの養鶏もようやく近代化の波がやって来た様で、ブラジル人資本家の連中が採卵養鶏に目を付けて来ました。最近出来た300万羽収容のウインドウレス鶏舎の費用は3000万ドルと言はれて居ます。サンパウロ州日系人が主体の養鶏ですので、一度に大型化するような日系人資本家は居ません。現在ブラジルで一番のネックになって居る事は、鶏卵消費が国民一人当たり年間90個ですので直ぐ生産過剰になります。十数年前は110個の消費でしたが、コレステロールの問題から立ち直れないのが現状です。これに対してブロイラーの生産と消費は大変な伸びで、北米と競合するまでに発展して来ました。

現在ブラジル養鶏界はガンボロ病が猛威を振るっていて、大型養鶏家や一般養鶏家は戦々恐々です。ワクチンを6回も投与するのですが、効果は無く発病する養鶏家が沢山あります。もし何かの対策がありましたら御教授下さい。経営を実際にやって居る養鶏家の方が、もっと対策について研究されて居るのではないかと思っています。現在の所我々グループには発生が有りませんが、いずれは入って来るのではないかと腹を括っている所です。

これを機会に宜しくお願い致します。小生のe-mailは日本語で受信出来ます。 以上』

… … …

2/July/02

中国家禽卵の国際市場輸出潜在力とは(7/2)

千々岩 壬さんより貴重な情報をいただきました。

中国の鶏卵に関する情報はどれを信用してよいのやらわかりませんが、とにかく凄いことが書いてあります。いろいろな情報をつき合わせて実像を探るしかありません。

中国家禽卵の国際市場輸出潜在力とは2002-7-2
http://jp.foodchina.com/content/news/s2002-07-02-3c.htm
以上

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