たまご屋おやじの独り言 2004年2月

たまご屋おやじの独り言 2004年2月

29/February/04

鳥インフルエンザ 京都丹波

ついに恐れていたことが現実になってしまった。 山口県大分県のケースと違い京都丹波町の場合は桁違いに危険だ。 特に病気に罹った鶏を兵庫県、愛知県に輸送し病原菌を撒き散らしてしまった事だ。 これは明らかに事の重大性に気がつかぬ農場経営者の判断ミスであり、人為的に防げたことである。

鳥インフルエンザの感染経路がわからぬ以上、日本全国の養鶏場でいつそれが発生するかも知れない。 不運にも鳥インフルエンザの発生してしまった農場を責めることは出来ない。しかし発生後のすばやい的確な判断(つまりが報告)が出来るかどうかは農場側の責任である。この判断を間違え結果的に多数の人たちに迷惑をかけてしまい、その農場は再起することが難しくなるであろう。

各自農場による自己防衛の範囲を超えているのがこの病気の怖いところである。 不幸にして今回撒き散らされた強毒AIウィルスにより感染が拡がれば、たちまちにして殺処分、地中埋没、半径30Km移動禁止方式は機能麻痺に陥ってしまう。

業界が一致して要望しているAIワクチンしかこの急場をしのぐことはできない。大火事を目の前にして未だにその安全性、有効性を議論している時間はない。まず火を消しにかかることだ。早速農水省の緊急輸入されたAIワクチンを現場で試験して、どのように使用したら有効か、情報を公開して欲しい。

28/February/04

ぶらりぶらり通信 「友あり遠方より来るまた楽しからずや」

1960年4月、全国から選び抜かれた農村青年55名がプロペラ機でサンフランシスコに降り立った。 当時日本人はろくな物を食べていなかったので、皆痩せていたが眼だけはきらきらしていた。それぞれに青年らしい気負いと夢をもってこれから8ヶ月間、カリフォルニアの農業を身体で体験することに興奮していた。 当時、為替レートは1$=360円であり、持ち出せる金も僅かであった。それより何より青年が海外に出るチャンスは少なかった。

農業実習生といっても、現実は厳しく労働力としてこき使われた。最初のうちは体力的にとても現地の人たちに敵わなかったが、栄養をつけ体力が出てくるとかなりいい線までレースになった。始めほとんど判らなかった言葉も3ヶ月もすると少し聞き取れるようになった。不思議なことに聞き取れるといつの間にか英語が口から出ていた。一人で放り出されたのが良かったのであろう。仕事に対する責任感となると日本の青年はとても信用された。一度信用されるとかなりの仕事まで任せてくれた。

8ヵ月後、55名の青年たちは得がたい経験をし国に戻った。それぞれの分野で活躍し、やがて定年を向かえ仕事を離れる時が来た。

ここ十数年、その仲間たちが年一回、回りもちで集まる。今年は私らの当番で、埼玉の秩父に奥さん方をいれて32名、全国から集まった。 会えばたちまち40数年前の青年に戻る。「友あり遠方より来るまた楽しからずや」。

22/February/04

ぶらりぶらり通信 老い入れ

「死なぬ子3人みな元気、使って減らぬ金3両・・・」歳をとった私の親父がよくこの話をしていたことを思い出す。歳をとってからの幸福を言ったものであろう。両親は7人の子供に恵まれ、数え切れないほどの孫に囲まれて天寿をまっとうしたが、その間一人の子供を失った。 その時両親の尋常でない悲しみかたは今でも記憶に残っている。

嫌な話だが自分もその歳になってくるとやたらに「老い」という言葉が気になる。 先日、本を読んでいたら、江戸時代には「老い」をとても大事にしていて、今のように「老後」などと言わずもっと前向きに「老い入れ」、老に入ると言って喜んでいたのだという。 老人の知識と知恵が若者にとって大事にされ、その存在感が大きかったと立川昭二先生は言われる。

私どもの業界は今「鳥インフルエンザ」で大騒ぎである。今しばらくは老人の知識と知恵が必要であろう。 しかる後、「けふからは日本の雁よ楽に寝よ」(小林一茶)の気分で行きたい。これは遠い国から渡ってきた雁を詠ったものだが、なにか私には「老い入れ」への応援歌のような気がする。

21/February/04

鳥インフルエンザ 鶏の移動制限、区域縮小へ

大分県九重町のチャボに発生した鳥インフルエンザ(HPAI)について現在「防疫マニュアル」とおりの移動制限が実行されているが、愛玩鶏など小規模羽数の場合は移動制限区域の縮小が2月23日農水省で検討されるという。 是非とも現実にそった「防疫マニュアル」にしてもらいたい。

昨年(2003年)の丁度今頃、オランダで鳥インフルエンザ(HPAI)が発生した。 不幸にもオランダでは防疫の初動体制に遅れをとり全国的な感染となり、結果的には2800万羽の鶏を殺した。これはこの国にいる鶏の約三分の一にあたる。その隣国のベルギー、ドイツは、その侵入を予想し防疫体制をとっていた。それでも4月にベルギーに感染があった時には2,5百万羽を殺した。 同年5月、ドイツにも感染があったが約8万羽の殺処分ですんだ。

ドイツが被害を最小限に食い止めたのは、しっかりした初動防疫体制をとったからであるし、そしてその時間があった。 EU参加諸国は鳥インフルエンザ(HPAI)に対して同じ「防疫マニュアル」を適用している筈である。運不運もあるが結果は天国と地獄である。如何に初動体制が大事かわかる。今のところ日本はそれに成功しているといっても良い。

EU鳥インフルエンザ(HPAI)「防疫マニュアル」は発生農場から半径1Km(状況によって3Km)以内の農場を全殺処分することを骨子としている。 日本のように半径30Km以内の移動禁止の項目はないようだ。 日本のように初動体制がしっかりしていれば、この30Km規制はもっと大はばに縮小出来るに違いない。 山口県の場合はこの30Km規制のために国と県は約5億円の税金を使わざるをえなかったし、おそらく大分県の場合数羽のチャボのために数億円の税金が必要となるだろう。 日本の「防疫マニュアル」が早々に再検討が必要な理由である。

15/February/04

ぶらりぶらり通信 外部脳?補助脳

歳を重ねると自慢じゃないが脳のメモリー機能が違ってくる。つまり口惜しい話だが物忘れがひどくなる。 これを積極的に評価して、老人として正常であり、老人力であるとすら言っている人がいる。長生きしていれば、悲しいことのほうがどうしても多くなる、それをいちいち正確に記憶していたのでは身が持たない。それゆえ安全弁が働いて物忘れするのであると・・・。なんだか最近の私を慰めているような言葉だが素直に受け取ることとしよう。

すぐ近くにある埼玉工業大学の根岸先生が中心になって地域のためにパソコンクラブを組織され無料で教室を開放してくださっている。そしてそこには最新式のパソコンがずらりと並んでいる。ここに集まるメンバー十数名はまことにユニークで、私のような初心者からその道のプロ級まで種々雑多で、年齢も若者から80代までそろう。それらが土曜のひと時、教室でワイワイガヤガヤやる。楽しい一時である。

そこでの結論をひとつ。
歳をとって記憶力が衰えたら、積極的に外部脳?または補助脳としてパソコンを使えば問題は解決、つまり老人こそパソコンが必要というのである。 そこで楽しい記憶のみを忘れないようにパソコンにぶち込んでおき、悲しい記憶は本物の脳にさせ、それはボケるのに任せたら良い。そこまで話して皆大笑いになった。 私は早速デジカメを購入して近くの梅園の開花記録をパソコンに残すことにした。

14/February/04

鳥インフルエンザ 日本のマスコミは冷静?

この一ヵ月半、全国の養鶏家は事の成り行きを固唾を呑んで見守っている。 山口県の一養鶏場とその周辺でおきたことが、自分の農場でいつ突然起きるかわからないからだ。安全圏にいるものは誰もいない。勿論、各自の農場のレベル、県、国の段階ではそれぞれの対策はたてているし、その効果も出ている。

今回不幸中の幸いと言って良いのは、消費者の人たちの冷静な対応である。とても牛のBSE騒ぎでパニックになった同じ人たちとは思えない。マスコミの悪騒ぎにある種の免疫がついてしまったのであろうか。確かに今回マスコミはBSEの時に比べれば比較的冷静であったと言ってよい。

先日(2/12)、韓国中央日報日本語版にこんなことが出ていた。 韓国鶏肉協会のハン・ヒョンソック会長は「韓国では、とくにマスコミが鳥インフルエンザを扇情的かつ過剰に報じ、今回の事態を招いたとの見方を示している。(鶏肉の消費が激減したこと)」「その半面、日本の各メディアは、落ち着いて事実中心に報じ、日本産鶏肉は安全だとの点を強調、業界被害や消費者の懸念を最少化した」と話した。

いつも日本国内のマスコミには口惜しい思いをしている者にとっては少々褒めすぎであるが、隣の韓国からはそう見えるのかもしれない。

7/February/04

ぶらりぶらり通信 櫛挽ヶ原 立春

まだ辺りは寒いけれども春は確実にやって来ている。 鶏など生き物と一緒に生活していると、それを早く感じとることが出来る。 わずかではあるが陽の光が長くなり、輝きが増してくるとそれを敏感に受けて、鶏たちは元気が出てくるし、防風林にやってくる鳥たちも動きが活発になる。それに引き換え防風林の木々はまだ静かにしている。おそらく眼に見えないところでその準備をしているのであろう。

この時期、歩いて15分のところにある埼玉県の園芸試験場を訪ねるのは楽しみだ。 なんと此処には日本中の梅ノ木が百数十種類植え込んである。丹精こめたそれらがこれから順番に咲いてゆく。それを拝見出来るとは贅沢の極みだ。

先日の久しぶりのお湿りで水路の端に植えておいた土留めの"玉竜"もすっかり活きかえった。 庭のモクレンの花芽もここ二、三日で随分と膨らんだ気がする。いつも突如として顔をみせる福寿草の黄色の花には驚かされるし、先陣をきって咲いていた蝋梅もその役目を終えようとしている。

5/February/04

鳥インフルエンザ 国でワクチン備蓄

昨晩(2/4)NHKの「クローズアップ現代」で鳥インフルエンザが取り上げられた。そこでは既にこの問題は一養鶏業界の損得ではなく、人類の生存を脅かす伝染病をどうするか、との視点で捉えられていた。

既に報道されているが、「鳥インフルエンザ(HPAI) 国でワクチン備蓄」が決定した。 養鶏業界が一致して政府に要望してきたことでありとても喜ばしい。 これは2月3日開催された「食料・農業・農村政策審議会消費・安全分科会家畜衛生部会第3回家きん疾病小委員会」で決められたもので、内容はホームページにある。 http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20040203press_4.htm
時が経つにつれ、日本を除き中国をはじめ東南アジアの国々が、鳥インフルエンザの防疫について制御不能の様相を呈してきた。それが治まったとしても、火種はいたるところに残ってしまう。将来ともこれ等の国々との経済交流のなかで日本は生きていかねばならぬ以上、わが国だけこの病気からクリーンでいられない。

わが国の今のクリーン作戦には限界がある。山口県の場合は養鶏場の密度が少なかったが、万一鶏密集地帯でこれが発生したら現在の防疫体制では制御不能になる恐れがある。もっとワクチンの使用を積極的に検討すべきだ。クリーン作戦にこだわるあまり逆に病気を制御出来なくなったのでは元も子もない。 目的は人に害を及ぼさないために養鶏場で鳥インフルエンザを発生させないことだ。今回のワクチンの輸入、備蓄がそれに備えたものと考えられるが、是非とも有効に使用してもらいたい。

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