三屋清左衛門残日録

 本を読むのは楽しい。
若い時からの乱読癖は未だに直っていない、ただその時に面白いと思ったものを手当たり次第に読んできただけなので、系統も体系もありはしない。
このまえ倉庫にある本棚をゆっくり見回した、貧乏性で若い時から買った本は捨てられないのでそれらは雑然とそこに並んでいた。
こんな本に若いとき夢中になっていたのかと可笑しくなった。

いずれ近いうちにこれらを処分しなければならない、私にとっては宝物であっても他の人にはただのゴミに違いない。
これ等の本の中で再読したいのは、正直100冊に1冊あるかないであろう。
どうも私は読みたい時にそれを読んでおかないとチャンスは2度とこない気がする。
老後時間が出来たらたっぷり本を読めると考えるのは、どうやら間違いのようで、人にもよるがその時には読みたい意欲が衰えるし、視力も落ちる。

81歳の原田先輩のメールが刺激となって、藤原周平の「三屋清左衛門残日録」を読んだ、今まで時代物小説などあまり読まなかったのでつい引き込まれた。
隠居したての清左衛門の心の動き、世間とのつきあいが淡々と描かれている。
良くしたもので、その年齢になって初めてわかる事がある,この本は私が60代のはじめに読むより、70歳になった今のほうが何倍も面白いような気がする、80代になればもっと深く読めるのであろう。

いつのまにか本を読む習慣を身につけていたのは有難い事で、一冊読み終えると必ず次の読みたい本がでてくる。
しばらく読むのを止めていると、次に読みたい本は出てこないのは不思議だ。
視力が落ちてきたので今後読める本の数は限られるのは辛いことだが、今しばらくこれを続けたいものだ。