春寒(しゅんかん)

晦日の晩、我が家に集まった子供たちとその連れ合い孫どもは総勢16名となった。
いつもはカミさんと二人で暮らしているので、この晩は特別賑やかになった。
この日の主役はカミさんで娘ども嫁さんたちを指揮して我が家の正月料理「春寒(しゅんかん)」を作っていた。

この料理はもともと鹿児島県の郷土料理で早春の祝い料理らしい、豚の三枚肉 大根 人参 牛蒡 椎茸 葱 油揚げ などを薄い醤油味でコトコト煮る。
野菜は煮くずれないように面取りする、お正月中これを暖めなおして食べる、あとになるほど野菜に味が沁みて旨くなる。

カミさんと一緒になった時、私の両親とは別所帯であったから、おふくろの味はいつの間にかカミさんのそれとなった。
カミさんの父親は生粋の鹿児島県人であったし、その母親も福岡の出であるが、東京に出てきてからも鹿児島の味が優勢となっていた。 
カミさんは娘ども嫁さんたちを交えて野菜の面取りをしながら賑やかに世間話をしている、そこにおやじの出番はなく息子たちとボソボソ仕事の話などしていた。
鹿児島の味がこの埼玉県深谷市の地に根付いたのであるが、我が家のおふくろの味がどのように子供らに伝わっていくのか知りたいものだ。

全員で食事をとると時間はもうNHK紅白歌合戦が始まっていた、先ほどまで大騒ぎをしていた小さい孫たちは腹がいっぱいになったらしくやっとおとなしくなっていた。
いろんなことがあった一年だったが、なんとか皆無事で歳を越せた。