みごとなタマゴの電子顕微鏡写真

もう50年ちかくタマゴの生産と販売をしているが、こんなに見事なタマゴの写真を見たことがない。
先日、「たまご博物館」の高木伸一さんからメールをもらった、最新の走査電子顕微鏡による卵殻部の断面図が手に入ったから見てくれという、早速見てみた。
http://homepage3.nifty.com/takakis2/rankaku-syou.htm

鶏がタマゴを産むとその直後は殻は透明な分泌液につつまれてぴかぴか光っている、ほんの数分のうちにこれは乾いてしまう。
これを専門用語でクチクラ層というが、これが大変な働きをしていて、外から雑菌の侵入を防いでいるのだ。
それだけではない、写真にもあるとおり殻の内側には二重の膜があり(その電子顕微鏡写真は感動的に美しい)同じく雑菌からタマゴを守ってくれている。
科学の進歩が生命の神秘をだんだんと解き明かしてくれるが、わかればわかるほどその途方もない凄さが見えてくる。
これらの写真もその一端を見せてくれる。

有精卵であれば38・Cに近い高温で充分な湿度があれば21日間で立派なひよこが生まれてくる、その温度は雑菌にとっても好都合な環境であるのでその攻撃から自分を守る仕組みをタマゴ自身がもっている、つまり腐敗することはない。
それはクチクラ層、二重の膜のみならず、大事なひよこの基となる胚のある黄味、それを包んでいる白味には塩化リゾチームという酵素があり細菌を殺す、人間の風邪薬に使われているそれはタマゴの白味から取り出されているものだ。

日本ではほとんどのタマゴがお湯で洗浄されマーケットで販売されている、卵殻にすこしでも鶏糞などついていればクレームとなって返品されてしまう。
そのかわり洗浄によりクチクラ層は見事になくなっている。
ヨーロッパではタマゴを洗浄しない、多少タマゴに糞などついていても消費者はびくともしない、自然の状態こそ安全であると考える。
国民性の違いと言ってしまえばそれまでだが、どちらも細菌に対して安全と考えてよい。
とくに日本の場合パック卵の賞味期限は産卵日から二週間と設定されているが、実際はその半分以下の日数で回転している、クチクラ層がなくても大丈夫な期間である。
日本がタマゴを生で食べる習慣を持ちながら食中毒件数が少ないのは農場の生産体制と流通スピードが世界のレベルより一段高いからと考えられる。