ワクチン

ワクチン

日本で鳥インフルエンザの権威である北海道大学の喜田教授が最近「人、家畜、感染症」公開講演会で次のような発言をされていた。「現在の新型インフルエンザより毎年年間死者何千人を出す従来の季節型インフルエンザの対策が先決でそのワクチンをきっちりとすべきだ」とされた、なるほど今大騒ぎしている新型よりも旧型?のほうが死亡数が圧倒的に多いということだ。
さらに鳥インフルエンザ(鳥フル)については「窓の無い鶏舎に詰め込んで飼ったら、鶏がストレスを抱え病気になるのは当たり前、外に放して風通しを良くすべきだ、自然養鶏や豚の放牧には大賛成」、あたかも飼い方が悪いので病気になるような発言をされた。
また「鳥フルが人間に感染した例は中国、ベトナムインドネシア、エジプトが断然多くその85%を占める、なぜこの4ヵ国に集中するのか、それは家禽類にワクチンを接種して、感染した鳥の殺処分を怠ってきたからだ。ワクチンは症状を和らげることは出来ても感染を防ぐことは出来ない」として、まるでワクチンが悪者あつかいにされている。
「たまご屋おやじ」の経験からすれば、喜田先生にはいくつかの反論がある。
私が中国、ベトナムインドネシア、の農村を何度か歩き回ったところでは、それらの国では鶏はほとんど放し飼いの自然養鶏に近い、それなのにありとあらゆる鶏病が多く、養鶏農家の最大の悩みは病気の問題である、なかに近代的な養鶏農場があったがこの場合はたとえ密飼であっても衛生管理がよく病気の問題は少なかったこと、むしろ放し飼いの自然養鶏のほうが野鳥からの鳥フル感染の機会が多いことをこのことは物語っている。
次にワクチンの使用がこれらの国々の鳥フルの問題を難しくしていると言われる、確かに中国ではいい加減な鳥フルワクチンが横行したと聞くが、日本では鶏病コントロールについてワクチンの果たした役割はあまりにも大きい、近代的養鶏ではワクチン無しでは成り立たない、このことは自然養鶏でも同じこと、あるいはもっと必要とされる。
私は日本国内で40年以上あらゆる鶏病を経験してきたが最後の決め手はワクチンであった、日本の都市でこれほど人口が密集しているにもかかわらず壊滅的な伝染病を免れているのはやはりワクチンの働きが大きい。
日本での鳥フル対応が殺処分のみがベストであるとし、日本での鳥フルワクチン使用をためらわせている喜田教授の考えに「たまご屋おやじ」は納得できないのである。(喜田教授の発言要旨は091104日経新聞記事より引用)